伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

配達されたい私たち

2009-01-01 20:11:24 | 小説
 うつ病となり失業中の元旅行会社添乗員が、廃墟となった元映画館で自殺しようとして失敗した際に放置された7年前の郵便物を発見し、そのうち原形をとどめていた7通を配達してそれが終わったら自殺しようと決めて配達し7年前に届かなかった郵便が今届くことによって目の前で展開される人生の悲喜こもごもを見て、喪失していた感情を少し取り戻し・・・というストーリーの小説。
 この主人公自体、戦場カメラマンを志向しながらイラクに行くのが怖くてタイにとどまって娼婦とギャンブルに溺れてしかも世話になった娼婦を見捨てて帰国した情けない設定ですが、他人の人生に対する視線が冷たく意地悪。
 ふつう目の前で人生の悲喜こもごもに接すれば、思い直すでしょうし、少なくとも終盤は実家に帰った妻の元に向かうと思うのですが、ちょっと予想外のラストです。身勝手な人物にはそれらしき苦悩がという教訓なのか、それにも関わらず見捨てられない幸せと読むのか。
 いずれにしても、これだけ条件があっても建設的に前向きに進まないところにうつ病の深刻さを見るというお話なのでしょう。


一色伸幸 小学館 2008年11月3日発行
コメント
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