伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

日本列島の地形学

2010-03-27 02:59:13 | 自然科学・工学系
 プレートテクトニクスや活断層・地震、火山活動、海面変化、気候変化、降雨・山崩れ等による浸食、河川による浸食・堆積、自然災害、人工改変等による日本列島の地形の形成・変化について多方面から解説した本。
 日本列島がプレート境界にあり、東北日本が反時計回りに回転し西南日本が時計回りに回転してさらに小笠原弧の先端としての伊豆半島が衝突して形成され、全体として圧縮場にあり、現在も地殻変動が進行中であることが印象的です。最終間氷期の海面の最大上昇期(MIS5e:12万5000年前)の海面は現在と概ね同じですがその頃形成された海成段丘面が現在では海抜数十m~200mになっている(82ページ)、しかもその高さがかなりばらついていることは、日本列島の地殻が現在も相当な速度で隆起していることをよく示しています。
 変動帯にあるため地殻変動が活発なだけでなく活断層による地震や火山活動が活発な上、山地が多く多雨という条件のために山崩れや河川による浸食等で地形が大きく変化しやすいことが改めてわかりました。
 これらの研究が、年代測定の近年の発達により急速に進んでいることも実感できます。
 その意味で、多方面の研究の現段階を概略的に知るにはいい本だと思います。
 ただ様々な領域の研究者の共同執筆のため、執筆者の関心に応じて、理論的な説明と具体的事例の重きの置き方などのスタンスが違い、概説としてみても全地域が説明されているわけでないなど、中途半端な感じも残ります。学術用語の説明も親切とは言えず、素人が読むには少し辛いかなとも思います。


太田陽子、小池一之、鎮西清高、野上道男、町田洋、松田時彦
東京大学出版会 2010年1月22日発行
コメント
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