伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

マンハッタンの哀愁

2010-03-26 22:00:50 | 小説
 フランスで有名な俳優だったが女優の妻を若い俳優に寝取られて失意のうちにアメリカに渡り落ちぶれたフランソワ・コンブが、ニューヨークの深夜営業の軽食堂で出会った虚言癖のある女性ケイと飲み歩いた挙げ句に安ホテルで肉体関係を持ち、執着と嫌悪、過去の男たちへの嫉妬に揺れながら恋に落ちる中年恋愛小説。
 48歳の一度は功成り名を遂げたフランソワのケイへの執着とケイを失うことに対する不安と恐怖、ケイの過去の男性関係に対する嫉妬とケイの虚言癖への苛立ちと軽蔑、ケイが帰ってくる前夜の期待とむなしさと若い女性との関係という、まるで子どものような感情と行動のブレの大きさをどう読むか。落ちぶれた中年男の余裕のなさと見るか、恋に落ちれば人間そんなものと見るか。
 退廃的で露悪的で自虐的で観念的なタッチも含め、やさぐれてうらぶれたもの悲しさを味わえるか・我慢できるかが評価の分かれどころでしょうね。


原題:Trois chambres a Manhattan
ジョルジュ・シムノン 訳:長島良三
河出書房新社 2010年2月28日発行 (原書は1946年)
コメント
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