魔術が支配する「別世界」の人間の国「オモワ帝国」の世継ぎの17歳(8巻では途中で16歳になったという説明でしたが、9巻のはじめでタラが知らないうちに8巻のうちに17歳になっていたという注がついています:上巻6ページ、38ページ)の少女タラ・ダンカンが、様々な敵対勢力の陰謀や事件に巻き込まれながら冒険するファンタジー。
この9巻では、8巻で悪魔のパワーを吸い取って自らの内側に悪の化身「黒い女王」を抱え込んだタラが、黒い女王が皇宮内で表に現れたことからお尋ね者として指名手配されながら、敵マジスターのセレナ(タラの母親)の幽霊を悪魔の宝のパワーを使って生き返らせる計画を阻止するために仲間たちとともに建国の始祖デミデリュスが5000年前に悪魔の宝を封じ込めるために創造した海底の広大な洞窟をさまざまな防御装置に苦しみながら進み、マジスターと先陣争いをし・・・という展開を見せます。
圧倒的に魔力の強いタラ、力が強いモワノー、ファフニールなどの力強く魅力的な女性キャラを中心に立てていながら、近刊ではお色気路線に走りがちだったのが、9巻では新たな女性指導者のヘーグル5とサリュタを登場させ、タラに「女性を見くだすことは、人類の半分を見くだすことだわ」と久しぶりに自覚的なフェミニスト的発言をさせています。タラの恋愛の相手も、これまでイケメンで戦闘能力の高いエルフのロバンだったのを幼なじみのカルに切り替えたことも含め、初期の元気な女の子のファンタジーとしての新鮮さを改めて感じさせ、私には好感が持てました。
このペースで最初に言っていたとおり10巻で完結に向かえば締まってよかったと思うのですが(作者は現在は12巻まで書くと言っています)。
悪魔の宝で死者を蘇らせるとか、5000年前の建国の始祖が幽霊としてではなく現れて(「灰色時間」の中にいたとか・・・)強い魔力を発揮して次々困難を解決するとか、これだけ何でもありにされると緻密に考えたり批評しようという気力もなくなります。それはそれでおもしろいからそれでいいと割りきるべきなんでしょうね。
悪魔の宝も、確か私の記憶(記録)では6巻で13個+悪魔のシャツとパンツで15個と説明されていたのが、今回何の説明もなくマジスターが着用している悪魔のシャツとタラが破壊したシリュールの玉座、ブリュックスの王杖(とクラエトルヴィールの指輪の試作品)の他にクラエトルヴィールの指輪、ドレキュスの冠、グルイグの剣が現存していたと整理されています(下巻177ページ)。
こういうふうに場当たり的に前提事実が変わったりするのがつらいですが、むちゃくちゃな急展開とこういう場当たり的な説明が9巻も続いているのでたぶん1巻からきちんとストーリーを押さえて読んでいる読者はほとんどいないと思います(私はもう全然ついて行けていません)から、気にする人自体ほとんどいないでしょうね。そういうハチャメチャなパワーに期待する作品というところでしょうか。私はもうかなり疲れてきていますけど。

原題:TARA DUNCAN , CONTRE LA REINE NOIRE
ソフィー・オドゥワン=マミコニアン 訳:山本知子、加藤かおり
メディアファクトリー 2012年8月3日発行 (原書は2011年)
8巻は2011年8月23日の記事で紹介しています
この9巻では、8巻で悪魔のパワーを吸い取って自らの内側に悪の化身「黒い女王」を抱え込んだタラが、黒い女王が皇宮内で表に現れたことからお尋ね者として指名手配されながら、敵マジスターのセレナ(タラの母親)の幽霊を悪魔の宝のパワーを使って生き返らせる計画を阻止するために仲間たちとともに建国の始祖デミデリュスが5000年前に悪魔の宝を封じ込めるために創造した海底の広大な洞窟をさまざまな防御装置に苦しみながら進み、マジスターと先陣争いをし・・・という展開を見せます。
圧倒的に魔力の強いタラ、力が強いモワノー、ファフニールなどの力強く魅力的な女性キャラを中心に立てていながら、近刊ではお色気路線に走りがちだったのが、9巻では新たな女性指導者のヘーグル5とサリュタを登場させ、タラに「女性を見くだすことは、人類の半分を見くだすことだわ」と久しぶりに自覚的なフェミニスト的発言をさせています。タラの恋愛の相手も、これまでイケメンで戦闘能力の高いエルフのロバンだったのを幼なじみのカルに切り替えたことも含め、初期の元気な女の子のファンタジーとしての新鮮さを改めて感じさせ、私には好感が持てました。
このペースで最初に言っていたとおり10巻で完結に向かえば締まってよかったと思うのですが(作者は現在は12巻まで書くと言っています)。
悪魔の宝で死者を蘇らせるとか、5000年前の建国の始祖が幽霊としてではなく現れて(「灰色時間」の中にいたとか・・・)強い魔力を発揮して次々困難を解決するとか、これだけ何でもありにされると緻密に考えたり批評しようという気力もなくなります。それはそれでおもしろいからそれでいいと割りきるべきなんでしょうね。
悪魔の宝も、確か私の記憶(記録)では6巻で13個+悪魔のシャツとパンツで15個と説明されていたのが、今回何の説明もなくマジスターが着用している悪魔のシャツとタラが破壊したシリュールの玉座、ブリュックスの王杖(とクラエトルヴィールの指輪の試作品)の他にクラエトルヴィールの指輪、ドレキュスの冠、グルイグの剣が現存していたと整理されています(下巻177ページ)。
こういうふうに場当たり的に前提事実が変わったりするのがつらいですが、むちゃくちゃな急展開とこういう場当たり的な説明が9巻も続いているのでたぶん1巻からきちんとストーリーを押さえて読んでいる読者はほとんどいないと思います(私はもう全然ついて行けていません)から、気にする人自体ほとんどいないでしょうね。そういうハチャメチャなパワーに期待する作品というところでしょうか。私はもうかなり疲れてきていますけど。

原題:TARA DUNCAN , CONTRE LA REINE NOIRE
ソフィー・オドゥワン=マミコニアン 訳:山本知子、加藤かおり
メディアファクトリー 2012年8月3日発行 (原書は2011年)
8巻は2011年8月23日の記事で紹介しています