富裕層を狙い、最後に必ず「白い鴉」の署名を残していく天才詐欺師とそれを追う警察官を軸としたサスペンス小説。
詐欺の被害にあうと本当に困る層は狙わない義賊的な志向の白い鴉が相手を巧妙に騙し続ける前半の痛快さと、人物像や怒りの内容を描いていきしかしいつまでも泳ぎ続けられないという後半のせつなさが読みどころだと思います。
最初に白い鴉の正体を暴き結末を示す「序章」が置かれているので、ミステリーというのもどうかなと思いますが、「刑事コロンボ」的な、どうやってそこに至るかを読む読み物になっています。話の流れ具合からは、「白い鴉」が詐欺に成功する短編の連作で始めて、後半でその正体や警察側の動きを描き始めたところから話がつながって長編志向になったというような感じに読めます。
白い鴉が騙し取ったお金を渡された側は、せめて白い鴉が正体を明かさずに渡していればいいですが、名乗った上で渡されてしまうと犯罪収益等収受罪になりかねませんし、受け取ったお金も犯罪収益として没収されるリスクがあります。白い鴉が一番渡したかった相手は、この小説の書きぶりだと救われません。そこはもう少しうまく設定すべきだと思うのですが・・・
新堂冬樹 朝日新聞出版 2011年9月30日発行
詐欺の被害にあうと本当に困る層は狙わない義賊的な志向の白い鴉が相手を巧妙に騙し続ける前半の痛快さと、人物像や怒りの内容を描いていきしかしいつまでも泳ぎ続けられないという後半のせつなさが読みどころだと思います。
最初に白い鴉の正体を暴き結末を示す「序章」が置かれているので、ミステリーというのもどうかなと思いますが、「刑事コロンボ」的な、どうやってそこに至るかを読む読み物になっています。話の流れ具合からは、「白い鴉」が詐欺に成功する短編の連作で始めて、後半でその正体や警察側の動きを描き始めたところから話がつながって長編志向になったというような感じに読めます。
白い鴉が騙し取ったお金を渡された側は、せめて白い鴉が正体を明かさずに渡していればいいですが、名乗った上で渡されてしまうと犯罪収益等収受罪になりかねませんし、受け取ったお金も犯罪収益として没収されるリスクがあります。白い鴉が一番渡したかった相手は、この小説の書きぶりだと救われません。そこはもう少しうまく設定すべきだと思うのですが・・・
新堂冬樹 朝日新聞出版 2011年9月30日発行