魔術師の男と魔女ウィッカに「太陽の伝説」と「月の伝説」の教えを請う女子大生ブリーダの心の旅と変容を描いた小説。
ブリーダに魔術師の男が説く「太陽の伝説」と魔女ウィッカが説く「月の伝説」は、私にはよくわかりませんでした。
私は、むしろ魔法や知識の伝授よりも、魔術師の男やブリーダの母が中年を過ぎて恋に落ちるその描写の方に興味を持ちました。魔術師の男が、ブリーダを愛しく思いながらも魔女ウィッカを思い、魔女ウィッカとの会話を想像する場面で、「『私も年をとった。会話をひとりで想像するなんて』だが、それは年齢のせいではない。恋に落ちた男はみんなこんなものだ、と思い出した。」(254ページ)って。ちょっとドキッとしてしまう。38歳のブリーダの母が、初めて会った通りすがりの男と数時間会話を交わし続けて別れたことを振り返り「あの午後、私は彼の友人であり、妻であり、聴き手であり、恋人だった。ほんの数時間で、私は一生分の恋を経験したのよ」と語るシーン(243ページ)。そんなことってあるのかなと思いつつも、齢を重ねてこそわかるプラトニック・ラブの価値を思い陶然としてしまいます。
メインストーリーの方を追っていると、ブリーダと恋人のローレンスとフォークの魔術師の三角関係の行く末、あるいはこれに魔女ウィッカを加えた関係の落ち着き先が気になってしまいますが、どちらかというとそこと離れたところでの恋愛をめぐるフレーズに心惹かれることが多い作品でした。

原題:Brida
パウロ・コエーリョ 訳:木下眞穂
角川文庫 2012年4月25日発行 (単行本は2009年、原書は1990年)
ブリーダに魔術師の男が説く「太陽の伝説」と魔女ウィッカが説く「月の伝説」は、私にはよくわかりませんでした。
私は、むしろ魔法や知識の伝授よりも、魔術師の男やブリーダの母が中年を過ぎて恋に落ちるその描写の方に興味を持ちました。魔術師の男が、ブリーダを愛しく思いながらも魔女ウィッカを思い、魔女ウィッカとの会話を想像する場面で、「『私も年をとった。会話をひとりで想像するなんて』だが、それは年齢のせいではない。恋に落ちた男はみんなこんなものだ、と思い出した。」(254ページ)って。ちょっとドキッとしてしまう。38歳のブリーダの母が、初めて会った通りすがりの男と数時間会話を交わし続けて別れたことを振り返り「あの午後、私は彼の友人であり、妻であり、聴き手であり、恋人だった。ほんの数時間で、私は一生分の恋を経験したのよ」と語るシーン(243ページ)。そんなことってあるのかなと思いつつも、齢を重ねてこそわかるプラトニック・ラブの価値を思い陶然としてしまいます。
メインストーリーの方を追っていると、ブリーダと恋人のローレンスとフォークの魔術師の三角関係の行く末、あるいはこれに魔女ウィッカを加えた関係の落ち着き先が気になってしまいますが、どちらかというとそこと離れたところでの恋愛をめぐるフレーズに心惹かれることが多い作品でした。

原題:Brida
パウロ・コエーリョ 訳:木下眞穂
角川文庫 2012年4月25日発行 (単行本は2009年、原書は1990年)