生涯未婚率が上昇していることを背景に、事実婚が法制度に取り込まれているフランスやスウェーデンの制度を紹介し、事実婚のメリット・デメリットを論じ、体験談を紹介して、事実婚の社会的認知を求める本。
この本では事実婚のメリットとして姓を変える必要がないのでさまざまな手続の面倒がなく姓を変えない側(多くの場合夫)への従属感を持たずに済む、家同士のつきあいを要求されない、夫の実家の墓に入ることを避けられる、別れても戸籍に記録が残らずバツイチなどといわれずに済むということを挙げ、デメリットとして周囲の理解を得られず説明がめんどう(特に地方や高年齢層)、子どもが非嫡出子となる、税金と相続で不利ということを挙げています(57~65ページ)。
法律婚なら離婚が困難で事実婚なら容易かというと、そうとは限りません。この本の体験記では、周囲から夫婦の絆が薄いと見られがちなことから行事には夫婦で出席して夫婦であることを強調してきたので簡単には別れられない(91ページ)、一方が荷物をまとめて出て行ったらそれで終わりなので相手のことを少しでも大事にしようと思っている(74ページ)という話が紹介されています。男と女の関係は、一筋縄ではいかないもので、当事者の意識は周囲が考えるのとは違ってきますし、制度上のメリット・デメリットに尽きるものでもありません。
この本の体験記等でも人により動機も問題意識も違っていることに表れているように、事実婚を選択している人の考えもさまざまです。姓が変わることがいやだというのが主要な動機の人は夫婦別姓を選択できる法律案が通ったら(今の日本の政治情勢では通りそうにありませんが)法律婚をするかもしれませんが、家同士のつきあいを要求されることが重いと考える人は選択的夫婦別姓が認められてもそれだけでは法律婚はしない(結婚相手の3親等までの親族が「姻族」として親族となる民法の規定が改正でもされない限り、あるいは法律レベルの話ではなくでしょうか)ということになるでしょうし、結婚という極めて個人的なことを国に届けることに違和感を持つ人(109ページ)はフランスやスウェーデンの事実婚登録の制度でも登録しないという選択をするでしょう。そういう意味では、現在事実婚を選択している人の全て、あるいは大半が夫婦別姓の法律案が通れば法律婚を選択するともいえません。そうだとすれば、政策的にはデメリットをどう解消していくかの方にシフトするのがベターかもしれません。
発行日が11月22日(夫婦の日)っていうのは狙ってたんでしょうね。
渡辺淳一 集英社新書 2011年11月22日発行
この本では事実婚のメリットとして姓を変える必要がないのでさまざまな手続の面倒がなく姓を変えない側(多くの場合夫)への従属感を持たずに済む、家同士のつきあいを要求されない、夫の実家の墓に入ることを避けられる、別れても戸籍に記録が残らずバツイチなどといわれずに済むということを挙げ、デメリットとして周囲の理解を得られず説明がめんどう(特に地方や高年齢層)、子どもが非嫡出子となる、税金と相続で不利ということを挙げています(57~65ページ)。
法律婚なら離婚が困難で事実婚なら容易かというと、そうとは限りません。この本の体験記では、周囲から夫婦の絆が薄いと見られがちなことから行事には夫婦で出席して夫婦であることを強調してきたので簡単には別れられない(91ページ)、一方が荷物をまとめて出て行ったらそれで終わりなので相手のことを少しでも大事にしようと思っている(74ページ)という話が紹介されています。男と女の関係は、一筋縄ではいかないもので、当事者の意識は周囲が考えるのとは違ってきますし、制度上のメリット・デメリットに尽きるものでもありません。
この本の体験記等でも人により動機も問題意識も違っていることに表れているように、事実婚を選択している人の考えもさまざまです。姓が変わることがいやだというのが主要な動機の人は夫婦別姓を選択できる法律案が通ったら(今の日本の政治情勢では通りそうにありませんが)法律婚をするかもしれませんが、家同士のつきあいを要求されることが重いと考える人は選択的夫婦別姓が認められてもそれだけでは法律婚はしない(結婚相手の3親等までの親族が「姻族」として親族となる民法の規定が改正でもされない限り、あるいは法律レベルの話ではなくでしょうか)ということになるでしょうし、結婚という極めて個人的なことを国に届けることに違和感を持つ人(109ページ)はフランスやスウェーデンの事実婚登録の制度でも登録しないという選択をするでしょう。そういう意味では、現在事実婚を選択している人の全て、あるいは大半が夫婦別姓の法律案が通れば法律婚を選択するともいえません。そうだとすれば、政策的にはデメリットをどう解消していくかの方にシフトするのがベターかもしれません。
発行日が11月22日(夫婦の日)っていうのは狙ってたんでしょうね。
渡辺淳一 集英社新書 2011年11月22日発行