伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

会計不正はこう見抜け

2015-04-25 20:38:43 | 実用書・ビジネス書
 アメリカを中心とする著名企業で現実に行われたケースを取り上げながら、企業経営者が、市場に向けて経営状態が良好であるように見えるように、当期の利益を拡大するために将来の利益を早期計上したり架空利益を計上したり一時的な原因による利益を恒常的なものと誤認させたり当期の費用を将来に繰り延べしたり費用を隠蔽したり、逆に当期に過大な利益がある時に利益を隠して翌期以降に回して順調な成長を装うなどの会計トリックの手法を解説した本。
 会計のルール自体に経営者の裁量の余地を残す曖昧さがあり(曖昧なところが多く)それを利用して収益計上の時期や計上費目を都合よく「解釈」してごまかしたり、従来通りのやり方では営業利益や営業キャッシュフローが小さくなったり赤字になる時にやり方を恣意的に変更したりして損益計算書やキャッシュフロー計算書の見栄えをよくする手法が多数紹介されています。それを著者の言葉でも「アグレッシブな」「クリエイティブな」と言っていたり(皮肉として言っている場合が多いと思いますけど)、当の企業は「収益に費用をより的確に対応させるため」(126ページ)と説明していたりします。このあたり、福島原発事故以前に従来の基準に問題があったから改正してもそれは認めずに「より安全性を高めるため」と説明し続けた原子力関係の規制当局や原発の主要機器や建屋にはまったく耐震補強工事をしないで(耐震補強工事は配管のサポートを増やすくらい)解析の方法を変えて「より適切に評価した」ところ耐震裕度があるなどといって基準地震動の数値を引き上げてさもより大きな地震にも耐えられるかのようにいう電力会社の言いぐさとそっくりです。ごまかしをしようとする連中の思考方法は同じということでしょう。
 紹介されている会計トリックの中で、企業がリストラをする際に、必要以上のリストラ計画を立てて過大なリストラ費用を営業外の一時的費用や「特別損失」として計上し、その中に営業費用や営業損失を紛れ込ませて営業外の数字に押し込んで(111ページ、187~194ページ)市場に損失は「一時的なもの」、「営業外のもの」として深刻に評価させず、将来の営業費用を抜き出して当期の営業外の数字に追い出すことで将来の期の利益を数字上膨らませることができ(その結果リストラが功を奏したように見える)、もともと過大な計画のため使わなかったリストラ費用は引当金として将来の期で利益が少なかった時に取り崩して数字を調整できるなど、営業成績を粉飾したい経営者にとってはリストラ(過大なリストラ計画)が魅力的な手口だということは、とても勉強になりました。労働者が整理解雇(リストラ)されたときに、整理解雇の必要性(業務上の必要性)があったという使用者の主張に対して、より厳しいチェックが必要だなと痛感しました。


原題:Financial Shenanigans : How to Detect Accounting Gimmicks & Fraud in Financial Reports , 3rd Edition
ハワード・シリット、ジェレミー・パーラー 訳:熊倉恵子
日経BP社 2015年3月24日発行 (原書は2010年)
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