伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

検事失格

2015-11-22 20:28:18 | ノンフィクション
 佐賀市農協背任事件の主任検事として取調中に「ふざけんな、この野郎!ぶっ殺すぞ、お前!」と怒鳴り、それを法廷で証言して検察官を辞職した著者が、司法修習生時代から検事辞職後弁護士となった執筆時までを綴ったノンフィクション。
 学生時代に犯罪学のゼミを取り、ダイバージョン(不起訴、執行猶予等により犯罪者の早期の社会復帰を図ること)を実践したいという意思を持って検察官になった著者が、検察庁で自白と取れ(割れ)、逮捕した以上は起訴しろ(立てろ)と上司から激しく叱咤され、変貌していく過程が一番の読みどころです。
 司法修習生のとき、裁判所は左翼(青法協)を採用しないが、検察庁は洗脳する自信があるから採用するとうそぶいていた検事がいましたが、なるほどなぁという感じがします。
 もっとも、私の司法修習生時代、「弱気の検察、強気の刑裁」といわれ、検察官は100%有罪にする自信がないと起訴しないともいわれていたのですが、この本を読むと実情はだいぶ違うようです。
 同時に、組織、特に官僚組織や大企業では、組織のメンツ最優先で個人の良心が踏みつぶされ、良心を持っていた個人もすり切れ感情が鈍麻していく話をよく聞きますが、この本でもその典型例を読むことができます。検察庁というところは、割と野武士のような人がいて見識が示される場面もあると、私は期待しているところがあり、そういう部分に少し安堵していたのですが…


市川寛 新潮文庫 2015年2月1日発行(単行本は2012年2月)
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