日本労働弁護団の中心メンバーによる労働法・労働事件の実務解説書シリーズの不当労働行為・労働委員会関係の部分。
2008年に刊行された「問題解決労働法」シリーズの改訂版です。
労働者側の弁護士としての立場から、労働者側での闘い方、主張の軸とすべきことを指摘していますが、裁判例については、親子会社、グループ企業、関連会社の中での使用者(団体交渉の相手方等)の判断基準について、従来労働委員会が親子会社等のケースでは実質的支配力・影響力を基準として判断してきたのに朝日放送事件・最高裁判決(平成7年2月28日)以後は最高裁が判示した「雇用主から労働者の派遣を受けて自己の業務に従事させ、その労働者の基本的な労働条件当について、雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にある場合」という基準を形式的に適用して判断する傾向にあり、使用者の範囲が狭められていること(69~74ページ)、昇給考課差別の場合にいつまでの考課(査定)を労働委員会で対象にできるかに関して、同一の不当労働行為意思による場合は各年度の査定が継続する行為として一体として扱う労働委員会命令が多くあったのに紅屋商事事件・最高裁判決(平成3年6月4日)が各査定に基づく最終の賃金支払日から1年(各査定は個別)としたことが労働委員会の実務に大きな影響を与えたこと(104~105ページ)以外は、最高裁判決への明確な批判は見られません。思ったよりも、イデオロギー的ではなく、実務的に手堅い印象です。
宮里邦雄 旬報社 2016年4月11日発行
2008年に刊行された「問題解決労働法」シリーズの改訂版です。
労働者側の弁護士としての立場から、労働者側での闘い方、主張の軸とすべきことを指摘していますが、裁判例については、親子会社、グループ企業、関連会社の中での使用者(団体交渉の相手方等)の判断基準について、従来労働委員会が親子会社等のケースでは実質的支配力・影響力を基準として判断してきたのに朝日放送事件・最高裁判決(平成7年2月28日)以後は最高裁が判示した「雇用主から労働者の派遣を受けて自己の業務に従事させ、その労働者の基本的な労働条件当について、雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にある場合」という基準を形式的に適用して判断する傾向にあり、使用者の範囲が狭められていること(69~74ページ)、昇給考課差別の場合にいつまでの考課(査定)を労働委員会で対象にできるかに関して、同一の不当労働行為意思による場合は各年度の査定が継続する行為として一体として扱う労働委員会命令が多くあったのに紅屋商事事件・最高裁判決(平成3年6月4日)が各査定に基づく最終の賃金支払日から1年(各査定は個別)としたことが労働委員会の実務に大きな影響を与えたこと(104~105ページ)以外は、最高裁判決への明確な批判は見られません。思ったよりも、イデオロギー的ではなく、実務的に手堅い印象です。
宮里邦雄 旬報社 2016年4月11日発行