伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

わたしの神様

2016-08-06 00:37:56 | 小説
 同じテレビ局の事業部に勤める夫村上邦彦との間で子どもができて出産・育児休暇に入って報道番組のキャスターを降板する佐野アリサ、佐野アリサの後任のキャスターとなったバラエティ番組で人気の若手美人女子アナ仁和まなみ、番組の低迷で特集コーナーを任され女子アナには報道は任せられないと息巻く記者立浪望美の3人を中心に、プロデューサー藤村、邦彦と不倫関係を続ける事業部員野元裕子、総務職員金井、行方不明の元アナウンサー滝野ルイらが絡んでテレビ局での番組とスキャンダルや不倫関係をめぐりそれぞれの思惑がぶつかる群像小説。
 こんなにもそれぞれがプライドというか高い自己評価を持ち、他人を見下しあるいは他人に嫉妬し、成功しているように見える他人の足を引っ張り不幸を願うものかと慄然とするような描写が続きます。このような作品を元女子アナが書いているという事実が、テレビ局とそこに群れる人々の本性というか生態・性向を如実に現しているという心情を持たせ、テレビの世界はなぁという驚きとどこか溜飲が下がる思いを持たせる作品かなと思います。しかし、考えてみれば、それはおそらくはテレビ局や女子アナ、報道関係者の世界だけではなくて、人間社会ではどこでも、というのが言い過ぎでも、スポットライトが当たる場面があり成功・合格者とそうでない者の区別が比較的見えやすい(例えば弁護士業界のような…)世界ではありがちなことのようにも見えてきます。そう考えた上で、改めて、でも、こういうこと考えてるの、怖いなぁと感じる作品です。
 特に仁和まなみの容姿・容貌の美しさとそれを利用することに躊躇しない言動、美しさではなく実力を標榜する佐野アリサと立浪望美の言動から、女の争い、女たちの生きづらさがテーマと読めるのですが、たぶん、これも対岸の火事の高みの見物ではいられなくて、ジコチュウで自分だけがかわいくて思い上がりの甚だしい人々が、組織や組織外からの圧力で踏みつけられながら生きていく様子とその中でのわずかな成長といったあたりを読み取るべきなのだろうなと思いました。


小島慶子 幻冬舎文庫 2016年4月15日発行(単行本は2015年4月)
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