日本で議論されるというか、経営者側・政治家側から指摘される労働に関する論点を中心に、労働者をめぐる現状と立法・政策課題について、労働者側の視点から論じた本。
「日本特有」の制度として、経済界(経営者側)から克服すべきと指摘されてきた「終身雇用」について、日本でも全産業計や製造業では1990年代以降の平均勤続年数は伸びている(サービス業は平均勤続年数が減少している)し、世論調査では国民は終身雇用を支持している、それにそもそも日本の平均勤続年数はヨーロッパとの比較ではそれほど差がなくむしろ先進諸国では例外的に勤続年数が短いアメリカや韓国と比較するから長く見えるだけということが指摘されていて(30~35ページ)、目からうろこの思いをしました。同様に年功賃金についても、年齢の上昇に伴う賃金上昇率はヨーロッパとの比較ではむしろドイツ、オランダ、イタリア、イギリス、フランスは日本より上昇率が高いし、世論調査でも年齢が高くなるほどそして近年になればなるほど年功制賃金を支持している(132~137ページ)という指摘も、頭に入れておきたい話です。
残業問題でも、東証一部上場企業の上位100社の三六協定(残業時間の上限を定める労使協定)の1月の上限が過労死(脳・心臓疾患による死亡)労災認定基準の月80時間以上が70社、厚労省告示の月45時間以下はわずかに3社(東京新聞調べ:95~97ページ)ということや、2000年以降他の先進諸国では平均賃金が上昇しているのに日本は平均賃金が減少し続けているということ(76~77ページ:企業の内部留保は増え続けているのに)も、改めて現実を突きつけられると驚きます。
日本の労働者が置かれた状態を客観的に認識し、これほどまでに経営者側がやりたい放題のことをやって労働者が虐げられているのに、経済界の限りない欲望に追従してさらに労働者の権利を切り縮める政策(派遣労働者は確実に3年でクビにする派遣法改正は成立し、残業代ゼロ法案は継続審議中)を推進する人たちと闘うために、参考になる本だと思います。
高橋祐吉、鷲谷徹、赤堀正成、兵頭淳史 旬報社 2016年5月10日発行
「日本特有」の制度として、経済界(経営者側)から克服すべきと指摘されてきた「終身雇用」について、日本でも全産業計や製造業では1990年代以降の平均勤続年数は伸びている(サービス業は平均勤続年数が減少している)し、世論調査では国民は終身雇用を支持している、それにそもそも日本の平均勤続年数はヨーロッパとの比較ではそれほど差がなくむしろ先進諸国では例外的に勤続年数が短いアメリカや韓国と比較するから長く見えるだけということが指摘されていて(30~35ページ)、目からうろこの思いをしました。同様に年功賃金についても、年齢の上昇に伴う賃金上昇率はヨーロッパとの比較ではむしろドイツ、オランダ、イタリア、イギリス、フランスは日本より上昇率が高いし、世論調査でも年齢が高くなるほどそして近年になればなるほど年功制賃金を支持している(132~137ページ)という指摘も、頭に入れておきたい話です。
残業問題でも、東証一部上場企業の上位100社の三六協定(残業時間の上限を定める労使協定)の1月の上限が過労死(脳・心臓疾患による死亡)労災認定基準の月80時間以上が70社、厚労省告示の月45時間以下はわずかに3社(東京新聞調べ:95~97ページ)ということや、2000年以降他の先進諸国では平均賃金が上昇しているのに日本は平均賃金が減少し続けているということ(76~77ページ:企業の内部留保は増え続けているのに)も、改めて現実を突きつけられると驚きます。
日本の労働者が置かれた状態を客観的に認識し、これほどまでに経営者側がやりたい放題のことをやって労働者が虐げられているのに、経済界の限りない欲望に追従してさらに労働者の権利を切り縮める政策(派遣労働者は確実に3年でクビにする派遣法改正は成立し、残業代ゼロ法案は継続審議中)を推進する人たちと闘うために、参考になる本だと思います。
高橋祐吉、鷲谷徹、赤堀正成、兵頭淳史 旬報社 2016年5月10日発行