伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

白いしるし

2020-01-19 21:42:53 | 小説
 これまでに何度も恋に落ちのめり込んでは失恋することを繰り返し、今は恋人もおらず新宿3丁目のバーでアルバイトをしながら絵を描いている32歳の夏目が、友達づきあいが長い不遜な態度の写真家の瀬田から紹介されて作品展を見に行った画家の間島昭史の白い大きな紙に白い絵の具で描いた富士山らしき絵に強烈に惹かれ、間島にのめり込んでいくが、間島には道ならぬ関係の恋人がいてという恋愛小説。
 夏目も、瀬田も、そして間島も、ある種まじめなところがあり真摯にものごとなり恋愛関係を突き詰めているが、その陰にある種の異常性があり、「ふつうの」ほどよい恋愛ができずに、破滅的で凄惨な結果に突き進んでしまう、そういった暴走を描くことで恋愛の持つ狂気をえぐり出してみせる作品です。
 ちゃらんぽらんであったり怠惰であったりするが故にダメなのではなくて、まっすぐでありまっすぐすぎるが故に周囲とうまくやれなくなり傷ついてしまう。それもたやすく慰められるようなレベルでない凄まじさで。登場人物たちがそのように打撃を受ける様子を見て、衝撃と、自分にはもう/かつてもそんなエネルギーがない/なかったことの切なさを感じてしまいました。


西加奈子 新潮文庫 2013年7月1日発行(単行本は2010年12月)
コメント
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