伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

クレーム対応「完全撃退」マニュアル

2020-01-03 23:11:31 | 実用書・ビジネス書
 元警察官で「困難なクレームを解決し、企業の危機管理を援護する」として設立された(株)エンゴシステム代表取締役の著者が、「あらゆる業種の、あらゆるクレームに対応し、理不尽な要求を断ち切る『完全撃退マニュアル』の必要性を感じるようになりました」(「はじめに」8ページ)として書いた本。タイトル全文は「対面・電話・メールまで クレーム対応『完全撃退』マニュアル 100業種・5000件を解決したプロが明かす23の技術」というとっても長いものです。
 冒頭にチェックリストがあり、クレーム対応のあり方として正しいものにチェックすることを求め、その中で「クレーマーも『お客様』だから、顧客満足の視点を忘れてはならない」という選択肢を、クレーム対応において「やってはいけないこと」と断じているところが、この本の特徴だと思います。クレーム対応について書かれた本では、クレームは改善意見の宝庫であり、クレーマーはファン予備軍であり(その商品に期待しているからこそクレームを寄せる)真摯なクレーム対応を通じてリピーター化できるというように書かれていることが多いように思われます。ある意味でクレーマー性善説ともいうべきものですが、この本は、それによりクレーム対応担当者が疲弊し退職していくことが企業のリスクであり、現在は一般市民(暴力団関係者ではない)が鬱憤晴らしやあわよくば金品をせしめようとして理不尽な要求を繰り返す大衆モンスターとなることが多くなっているとして、クレーマーを選別し、悪質な者に対しては毅然として跳ね返すべきことを勧めています。端的に言えば、最初の5分は決してクレーマー扱いせずに言いたいことを言わせ相づちを打って話をつなぎ謝罪(相手のクレーム内容を認めるのではなく、不愉快にさせた/不便な思いをさせたことなどについての謝罪)の姿勢を見せ、30分間までは事実関係の把握に努め予め定めている範囲の解決案を提示する、それでも納得せずにそれを超えた要求をする者に対しては、要求を拒否し警告し放置するというような形です。
 ある意味で常識的でわかりやすい話ですが、これで完全撃退できるということではないと思いますし、企業側に問題があるときにそこを見落として/あるいは棚に上げて、組織防衛/責任回避をする言い訳に使われるリスクもありそうです。


援川聡 ダイヤモンド社 2018年9月12日発行
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