NHK大阪放送局で司法担当キャップとして森友事件の取材を続けていた記者が、森友事件取材の初動から記者を外されて退職するまでを書いたノンフィクション。
森友事件報道初期の著者が書いた原稿とデスクが直した原稿が対比され、クローズアップ現代での報道内容に報道局長が介入してくる経過などが生々しく書かれていて、NHK幹部の官邸・政権への忖度が読み取れます。しかし、この本のタイトルとなっている官邸からの圧力については具体的な記述はまったくありません。NHK幹部の行動の背景には当然に官邸の圧力があったのでしょうけれども、この本に書かれている事実自体は、官邸対NHKの闘いではなく、NHK幹部(報道局長)対大阪社会部/司法担当記者の闘いで、このタイトルは読者にとってミスリーディングでしょう(著者の気持ちは、このタイトルに表れているかも知れませんが)。
私にとっては、森友事件関係そのものよりも、取材に当たっての対象者との人間関係の作り方(事前準備・調査や口論した後のフォロー等)、対象者への質問の仕方(聞きたいことをいきなり直接聞くのではなく、対象者が話したい/聞きたいことから入って行き間合いを詰めてから当てる等)などの記述が、とても興味深く読めました。相手が話してはいけないと構えている自分が聞きたいことを聞き出すときに何をすべきか。法廷で行う尋問の場合とは違っても、考えるべき材料と示唆があるように思えます。著者が評価するデスクが言う「考えて考えて、頭が禿げるほど考え抜いてから取材に行け!」という「金言」も…
相澤冬樹 文藝春秋 2018年12月25日発行
森友事件報道初期の著者が書いた原稿とデスクが直した原稿が対比され、クローズアップ現代での報道内容に報道局長が介入してくる経過などが生々しく書かれていて、NHK幹部の官邸・政権への忖度が読み取れます。しかし、この本のタイトルとなっている官邸からの圧力については具体的な記述はまったくありません。NHK幹部の行動の背景には当然に官邸の圧力があったのでしょうけれども、この本に書かれている事実自体は、官邸対NHKの闘いではなく、NHK幹部(報道局長)対大阪社会部/司法担当記者の闘いで、このタイトルは読者にとってミスリーディングでしょう(著者の気持ちは、このタイトルに表れているかも知れませんが)。
私にとっては、森友事件関係そのものよりも、取材に当たっての対象者との人間関係の作り方(事前準備・調査や口論した後のフォロー等)、対象者への質問の仕方(聞きたいことをいきなり直接聞くのではなく、対象者が話したい/聞きたいことから入って行き間合いを詰めてから当てる等)などの記述が、とても興味深く読めました。相手が話してはいけないと構えている自分が聞きたいことを聞き出すときに何をすべきか。法廷で行う尋問の場合とは違っても、考えるべき材料と示唆があるように思えます。著者が評価するデスクが言う「考えて考えて、頭が禿げるほど考え抜いてから取材に行け!」という「金言」も…
相澤冬樹 文藝春秋 2018年12月25日発行