動物園・水族館の管理者・飼育係の話を聞き、動物園・水族館の実情を報じ、そのあり方についての関係者の意見と取材を続け「生きもの大好き」という記事を共同通信から配信してきた著者の思いを述べる本。
動物園についての記事よりもまずメディア側の対応への関係者の疑問と著者の自省が序盤で語られているのに気を惹かれました。横浜・ズーラシア園長の「最近の動物園の記事はつまらない。動物園から記者クラブに発表文と写真を提供すると、それを横並びに記事にするだけ。だからどの社も同じです。昔はみなさん、動物園に来ていた。現場をまわり、現場の人に話を聞いて、はっと思うことを書いていました。」(13ページ)、コウノトリの郷公園研究部長の「マスメディアの人と話すと、引いていないなと感じる。どうポップにするのか、どう歪めて面白くするのかを考えている」(26ページ)や、著者自身の「記者が事前に答えを予測し、やりとりを想定し、ストーリーを思い描くことはあってもいい。しかし、それに合わせて都合のいい言葉を引きだそうとすることは『当てはめ取材』と呼ばれ、否定される」(22ページ)、「編集綱領の『国民が関心をもつ』という中立的な姿勢から一歩進んで『国民に関心を持たせる』『関心をあおる』というところまで進んでいるのではないかと心配になる。」(82ページ)など、とても示唆的に感じられました。
動物園での「展示」のあり方についてショー化や自然に反する展示に批判的な意見を述べている(140~164ページ等)著者が、旭山動物園の展示(例えばペンギンが「空を飛ぶ」とか)についてどのように評価しているかは興味深いところでしたが、まとまった考察はなく、テナガザルの展示について肯定的な記載が1箇所ある(216~217ページ)だけでした。取材先に対して批判的なことは書けないということか著者の考えがまとまっていないのかはわかりませんが、ちょっと肩透かしの感じがしました。

佐々木央 ちくま新書 2022年11月10日発行
動物園についての記事よりもまずメディア側の対応への関係者の疑問と著者の自省が序盤で語られているのに気を惹かれました。横浜・ズーラシア園長の「最近の動物園の記事はつまらない。動物園から記者クラブに発表文と写真を提供すると、それを横並びに記事にするだけ。だからどの社も同じです。昔はみなさん、動物園に来ていた。現場をまわり、現場の人に話を聞いて、はっと思うことを書いていました。」(13ページ)、コウノトリの郷公園研究部長の「マスメディアの人と話すと、引いていないなと感じる。どうポップにするのか、どう歪めて面白くするのかを考えている」(26ページ)や、著者自身の「記者が事前に答えを予測し、やりとりを想定し、ストーリーを思い描くことはあってもいい。しかし、それに合わせて都合のいい言葉を引きだそうとすることは『当てはめ取材』と呼ばれ、否定される」(22ページ)、「編集綱領の『国民が関心をもつ』という中立的な姿勢から一歩進んで『国民に関心を持たせる』『関心をあおる』というところまで進んでいるのではないかと心配になる。」(82ページ)など、とても示唆的に感じられました。
動物園での「展示」のあり方についてショー化や自然に反する展示に批判的な意見を述べている(140~164ページ等)著者が、旭山動物園の展示(例えばペンギンが「空を飛ぶ」とか)についてどのように評価しているかは興味深いところでしたが、まとまった考察はなく、テナガザルの展示について肯定的な記載が1箇所ある(216~217ページ)だけでした。取材先に対して批判的なことは書けないということか著者の考えがまとまっていないのかはわかりませんが、ちょっと肩透かしの感じがしました。

佐々木央 ちくま新書 2022年11月10日発行