アメリカ連邦最高裁判事であり、保守派の裁判官として、リベラル側、特にフェミニストからは嫌われていたアントニン・スカリアが、制定法解釈で法律の条文を軽視し立法者意思(現実には立法当時には想定されていなかったからこそ制定法上明確な言及がなく争点になっているのだから、歴史的事実としての立法者意思は不明であるのだが)を根拠に当該事案について裁判官が適切と考える結論を導くアメリカの裁判官の傾向・やり方について、批判し、より条文に忠実な解釈を求めることを提起し、それに対して4名の学者等がコメントし、さらにそれにスカリアが応答するというスタイルの本。
立法と、それが制定時には想定していなかった事件・事情・社会情勢での裁判所の対応をめぐり、そのあり方を論じ考える、法律実務関係者にとっては頭の体操になり、また現実的にも考えさせられる本です。
保守派と位置づけられるスカリアが、「もし裁判所が新たに憲法を自由に書き換えることができるのなら、きっと社会の多数派の望む方向で書き換えるだろう。裁判官の指名と承認の手続から、これを予期することができる。もちろんこれは、社会の多数派からの保護を意図していたのに、いまやその多数派に尽力することを意味する、権利の章典の終焉である」(61ページ)と、マイノリティ保護を論じているのは、興味深いところです。まぁ、議論では、相手方に、自分の主張はそちらの利益にもなるんだというのは1つのテクニックなので、本心で言っているのかはわかりませんけど。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/kaeru_en2.gif)
原題:A Matter of Interpretation : Federal Courts and the Law
アントニン・スカリア 訳:高畑英一郎
勁草書房 2023年1月20日発行(原書は2018年、原書初版は1997年)
立法と、それが制定時には想定していなかった事件・事情・社会情勢での裁判所の対応をめぐり、そのあり方を論じ考える、法律実務関係者にとっては頭の体操になり、また現実的にも考えさせられる本です。
保守派と位置づけられるスカリアが、「もし裁判所が新たに憲法を自由に書き換えることができるのなら、きっと社会の多数派の望む方向で書き換えるだろう。裁判官の指名と承認の手続から、これを予期することができる。もちろんこれは、社会の多数派からの保護を意図していたのに、いまやその多数派に尽力することを意味する、権利の章典の終焉である」(61ページ)と、マイノリティ保護を論じているのは、興味深いところです。まぁ、議論では、相手方に、自分の主張はそちらの利益にもなるんだというのは1つのテクニックなので、本心で言っているのかはわかりませんけど。
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原題:A Matter of Interpretation : Federal Courts and the Law
アントニン・スカリア 訳:高畑英一郎
勁草書房 2023年1月20日発行(原書は2018年、原書初版は1997年)