伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

火山 地球の脈動と人との関わり

2023-09-07 00:11:30 | 自然科学・工学系
 火山の成り立ち、噴火の種類、機序、火山災害の実情、火山の調査観測の実情と防災などについて説明した本。
 火山研究の第一線で活躍してきた(著者紹介)著者が、噴火の危険性を指摘しつつ、2013年からの西之島の噴火で旧島が溶岩流に飲み込まれた時点で海上保安庁が航行規制を行ったためJAMSTEC(海洋開発研究機構)が調査船の島への接近を拒否し、研究者が仕方なく漁船をチャーターしたが船主が海上保安庁に忖度してチャーターを拒否されて調査ができず、火山研究者として悔しい思いをしたと嘆く(105ページ)姿に学者魂を感じました。
 これまでの日本の主な噴火を紹介する第3章では、2003年から2014年まで火山噴火予知連絡会の会長を務めていた(著者紹介)著者が、噴火予知がいかにできなかったかを語り、予知が成功した例として報じられている2000年の有珠山の噴火も地下のマグマの動きを捉えて予知したのではなく、有珠山の過去7回の噴火ではいずれも群発地震のすぐ後に噴火していたために有感地震を伴う群発地震で緊急火山情報が発信された、「言うならば、理屈はよくわからないものの、古老の言い伝えを守って避難したら被害を免れたことに近い」(82~83ページ)と述べているのが、とても印象的です。その著者が、横軸に噴火年代(期間)、縦軸に累積噴出物量をプロットした「階段ダイヤグラム」による次の噴火時期・噴出量予測は個々の噴火について正確に知られていることが前提で、間隔が数千年から数万年の「カルデラ噴火」(大規模噴火)の噴火年代の誤差はとても数十年以内には収まらない、原子力発電所の稼働期間40年間に発電所に影響を及ぼすような噴火活動を起こす火山が160km以内に存在しないことを階段ダイヤグラムで示すように示唆する原子力規制庁の火山マニュアルはそれが「議論できると思うこと自体が間違っている」(195ページ)と言っていることも。


藤井敏嗣 丸善サイエンスパレット 2023年6月30日発行

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