1899年から1955年にかけての中国東北部の架空の邑→都市・李家鎮→仙桃城を舞台に、さまざまな人・グループ・部隊・軍・国がさまざまな思惑で交錯する様子を描いた群像劇。
時期が飛び飛びでいろいろな人が新登場して視点も変わるので、流し読みでは理解しにくいし、大部(600ページ余り)を読み通しても充実感よりも疲労感が先に立ちました。
冒頭ではスパイ行為のために潜入した軍人高木の通訳として登場したひ弱な学生だったがそのまま住み着いて頭角を現す細川、細川に見出されて満鉄のために調査に従事するようになった須野と寡婦となった高木の妻の間の子須野明男が全体を通して軸となり、そのまわりで多数の人が失意のうちに斃れ去って行くという構造です。中盤から比較的重用された中国人丞琳(作者はインタビューで戦う女性を描きたかったとも言っているようですが)も、初期には昏い輝きがあるものの後半では輝きを失いいまひとつに感じます。
共産党の細胞/キャップだったが特高に捉えられて仲間を売り、徴兵されて自分は人を殺すまい殺されるくらいなら撃たれて死ぬと思い定めていたにもかかわらず死の恐怖に敵を撃ち殺し、志と心を折られ続ける中川が、作者にとっては捨て石のひとつくらいの位置づけなんでしょうけど、実に哀しい。中川の「転向」をではなく、それを強いる権力、そのような権力がのさばる社会と時代をこそ許してはならないと思う。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/kaeru_yodare1.gif)
小川哲 集英社 2022年6月30日発行
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0d/f8/1259c7341e14a5e7c4514c86a04ed4f1.jpg)
時期が飛び飛びでいろいろな人が新登場して視点も変わるので、流し読みでは理解しにくいし、大部(600ページ余り)を読み通しても充実感よりも疲労感が先に立ちました。
冒頭ではスパイ行為のために潜入した軍人高木の通訳として登場したひ弱な学生だったがそのまま住み着いて頭角を現す細川、細川に見出されて満鉄のために調査に従事するようになった須野と寡婦となった高木の妻の間の子須野明男が全体を通して軸となり、そのまわりで多数の人が失意のうちに斃れ去って行くという構造です。中盤から比較的重用された中国人丞琳(作者はインタビューで戦う女性を描きたかったとも言っているようですが)も、初期には昏い輝きがあるものの後半では輝きを失いいまひとつに感じます。
共産党の細胞/キャップだったが特高に捉えられて仲間を売り、徴兵されて自分は人を殺すまい殺されるくらいなら撃たれて死ぬと思い定めていたにもかかわらず死の恐怖に敵を撃ち殺し、志と心を折られ続ける中川が、作者にとっては捨て石のひとつくらいの位置づけなんでしょうけど、実に哀しい。中川の「転向」をではなく、それを強いる権力、そのような権力がのさばる社会と時代をこそ許してはならないと思う。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/kaeru_yodare1.gif)
小川哲 集英社 2022年6月30日発行
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0d/f8/1259c7341e14a5e7c4514c86a04ed4f1.jpg)
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます