伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

もっと塩味を!

2008-10-14 01:17:53 | 小説
 パリで成功した日本人シェフの妻美佐子の半生と夫と夫の浮気相手、自分の過去の男との葛藤を描いた小説。
 主人公は、和歌山の資産家の息子と結婚し、食べ歩きの中でフランス料理に目覚め、夫の不貞を詰りながら自分も東京のフランス料理のシェフと浮気をし、離婚するが元夫からはまとまった金と毎月相当な仕送りを受け取り、東京で遊び歩く中で若いフランス帰りの年下のシェフと知り合って再婚し、前の男の出資でフランス料理店を出して成功し、パリに出店してトラブルを乗り越えて成功するというようなストーリーです。結局、この主人公は、いつも上流社会の中にいて、苦労といっても結局は元夫や前の男の経済的援助で貧しい思いをすることはなく、病気もするけど奇跡的に助かり続け、むしろずっとやりたいことを気ままにやり続けてる感じがします。これで、酷い目にあったとか、相手の男が悪いとかいわれてもなぁと、男性読者としては、やりきれない思いがします。
 作者も最後主人公の処遇に困ったのか、どうなったのかよくわからないぶん投げたようなラストですし。


林真理子 中央公論新社 2008年8月25日発行
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

問題解決労働法5 解雇・退職

2008-10-08 22:54:22 | 実用書・ビジネス書
 労働者側の弁護士による労働法の解説書。10巻組の1冊。
 労働事件の多くを占める解雇事件について、裁判実務に必要な知識がまとめられています。それぞれの項目に関する解説はわりと簡潔ですが、裁判実務に必要なことは、普通の解説書に書いていないことまで、けっこう目配りされています。弁護士には手頃な入門書と言えます。
 文章は法律用語や判決について特に説明なく書いていて、弁護士にとっては読みやすい文章ですが、弁護士以外の人が読み通すのはかなり厳しいでしょう。
 日本労働弁護団のメンバーによる解説ですから、基本的に労働者側の視点ですが、労働審判では解雇無効の場合に地位確認に代えて金銭支払いを命じる審判が出せるということが何度か強調されている(149頁、152頁、168頁、181頁)のはちょっと違和感を持ちました。この論点は、特に労働者側が金銭解決を拒否していても金銭支払いの審判を出せるかは、労働審判の立法過程で労働者側・使用者側の激しい対立のあったところで、簡単に認める前提で書かれるのは・・・(「労働者側が拒否しても」という言葉はないですが)


君和田伸仁 旬報社 2008年8月5日発行
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

アニメはいかに夢を見るか

2008-10-04 22:56:08 | 趣味の本・暇つぶし本
 アニメ映画「スカイ・クロラ」の監督とプロデューサーによる「スカイ・クロラ」のメイキングストーリー。
 衣食住に困らぬ社会でハングリー精神や目的を持てず将来の選択肢も現実には狭い中で閉塞感を感じている若者たちの気分を描きたいというような動機が語られ、例え永遠に続く生を生きることになっても昨日と今日は違う、そうやって世界を見れば僕らの生きているこの世界はそう捨てたものじゃない、同じ日々の繰り返しでも見える風景は違う、そのことを大事にして過酷な現代を生きていこうというようなメッセージを伝えたいということが語られています(7~11頁)。
 しかし、そうだとしたら、何故キルドレは生を実感するために死を意識し戦闘機乗りを選ぶのでしょうか。むしろ昨日と変わらぬ地道で退屈な日々を送る若者たちの閉塞感をそのまま描き、その中から、わずかな変化を見出していくという設定の方が、語っている内容からはずっと素直に思えます。
 メイキングストーリーの中で語られている経過(例えば62頁、94頁)からすると、単純に戦闘機が好きで、今まで誰もやったことがないような空中戦を描きたくてそういう話にしただけじゃないかと。草薙水素の髪をおかっぱにすることを監督が譲らなかったのも単に好きだから(116~117頁)というのと同じように。
 映画を見ていて感じた、アニメにしては異様に多い無言の間と長いカット、空のCGと地上の2次元手書きアニメの対比、光の過剰なまでの強調などの背景と思い入れは、読んでなるほどと思いました。
 タイトルはさておいて、「スカイ・クロラ」を見た人のためのファンブックと思った方がいいでしょう。


押井守編著 岩波書店 2008年8月6日発行
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

愛のうたをききたくて

2008-10-04 01:56:45 | 小説
 何度も結婚と離婚を繰り返す実務能力がなく逃避しがちな母親の元で育ったために、強気で実務能力があり愛(男)なんて信じられないと期間限定のボーイフレンドを作っては別れることを繰り返すレミーの高校卒業から大学進学までの夏を描いた青春小説。
 レミーにいきなり駆け寄ってきて運命の出会いと語るだらしないバンド男に反発しつつ、大学に進学するために街を離れるまでのおつきあいと決め、別れつつも何か気になるけど、また反発を繰り返す中でレミーの気持ちが揺れ動き、前に行く様子がテーマになっています。揺れ動いた末に最後の展開が、今ひとつ唐突な感じもしますが、青春・恋愛ってそんなものと見ておきましょう。
 つまらない男と離婚を繰り返す母親を不幸な女と捉えていたレミーに、別れて傷ついても愛し愛されたことは事実でその方が遥かに大切なこと、一人でいたっていいことは起こらなかったし傷つくのを恐れて閉じこもっていても強くなれない、弱くなるだけと、母親が諭すシーン(337~338頁)が印象的です。


原題:THIS LULLABY
サラ・デッセン 訳:おびかゆうこ
徳間書店 2008年7月31日発行 (原書は2002年)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする