どうせ寝ぼけているんだろうと思っていましたが、玄関に連れて行かれて、彼の指さす方を見て驚きました。そこには見慣れないゴムサンダルが置いてあります。
「よく見て!」
よく見ると、そのサンダルには何と「T理教」と書かれてあります。一瞬寒気がしました。
「どこから入ってきた」と聞かれても分からず、裏口に連れて行かれて、「何履いて来たんだ」と聞かれても履き物はないし、「これ履いていけ」と言われて、履いて来たのがこれ、と、もう泣きそうな顔をして話します。
「ぼく、三部さんと一緒にここに寝たよね」
隣に布団が敷いてあるし、抜け出したままの形ですから、寝たには間違いないと思います。
それが何故、隣の道場の広間に、どこからどうやって、謎は深まるばかりです。