Fsの独り言・つぶやき

1951年生。2012年3月定年、仕事を退く。俳句、写真、美術館巡り、クラシック音楽等自由気儘に綴る。労組退職者会役員。

自句自解(3) 蝉の声

2010年02月06日 10時55分14秒 | 俳句・短歌・詩等関連
★飛び去って木肌に残る蝉の声
 この句はまだ、痛みがそれほどでもなく、気持ちに多少余裕があった。北向きの寝室から夕日を浴びたアカシヤの木にニイニイゼミが止まって壮んに鳴いていたが、私の寝返りとともに蝉が飛び去った影が目に映ったように感じたが、それは幻覚だったのかもしれない。
 間歇的な痛みが治まると、蝉の声が遠景から好ましい声として認識でき、痛みが始まると蝉の声が痛みを増幅するように厭わしく頭の中で鳴り響いた。木の幹に声だけ残した飛び去ったかに見えた蝉は、静かな声で鳴いていた。
 ただし動詞が三つもあって焦点が定まらない。今ならつぎのように改めたい。
☆蝉去って幹に幽かな声のあと
あるいは句集に掲載するに当たり添削をうけた形の
☆秋蝉の声を木肌に残し去る

★痛みあり短夜の雨の終わりなき
 この句は、金曜の夜の救急外来から痛み止めだけを受け取って、前途暗澹たる思いで、帰ってきたときの想念。深夜小雨が降ってきた。高熱と間歇的な痛みは、薬で抑えているだけで、6時間が過ぎると再び有無を言わせず再開する。このまま死というあちら側へ、すっと入り込むのかという諦念と、せめて原因だけでも知りたいという思いと、耳の後ろの傷む神経だけでも切り取りたいという思いとが交錯する中、雨の音に少しだけ気分が和らぐことも合った。
 土日と二日は病院もやっていないとなるとひたすら我慢するしかないわけで、この時間が永遠のように長く感じられた。