★曼珠沙華蕊の雫に雲流る
★志野碗に映るいきおい曼珠沙華
★トンネルを抜けし鉄路に櫨紅葉
それまで曼珠沙華を見ても不思議な花だな、と思う程度でしかなかったが、退院後にたくさん団地内や道端に咲いていたので注視するようになった。いろいろな角度から眺め、周囲の風景との対比を楽しんだ。朝・昼・夕の光を受けた表情の変化も楽しんだ。一番の発見は、曼珠沙華は咲く場所を自分で選んで、ひょっとして私の好みにあわせて咲いているのではないか、ということだ。
植物だから移動するわけではないが、「ここにあったらいいな」という場所に生えている。それは他の場所に根付いても、環境の微妙な差で咲くことができずにいるために結果として、私の思いの場所に咲いてくれているのではないか、という想念だ。
庭で言えば端の方の少し斜面になって道路などに面して、樹木の陰がなく少し日当たりのいいところ。祠などが放置されるようにある敷地の入口で明るく水はけのよさそうなところ。坂道の途中の人家の塀が途切れて、誰も手入れをしないようなところ。
歩行していてなぜかふと歩をとめて周囲を見渡すと目に飛び込んでくる。ゆったりした歩行をするようになって初めて、曼珠沙華を細かく観察した。特に下から見上げる視点は気に入った。秋の雲との配合は見事だ。朝の内の雨の後、細い蘂に張り付いた雫に雲が映る様は、雨後の明るい世界を存分に満喫させてくれた。
住宅地に取り残されたような一角に、立派な墓が立っていた。彼岸の花とともに、立派な志野焼の椀に水が備えられていた。かすかな志野焼特有の赤と、墓の入口にいさぎよくくっきりした色合いで咲く曼珠沙華の赤が響きあっているようで美しかった。こんな墓の傍にしばらく座っていたかったが‥。
退院後、東北の温泉に向かったが、単線のゆったりした速度でトンネルを抜け出ようとしたとき、光の向こうに櫨紅葉の明るい色が目に飛び込んできた。こどものように列車の先頭に立ってワクワクしていた私の目には、生の謳歌のように力強く映った。
★志野碗に映るいきおい曼珠沙華
★トンネルを抜けし鉄路に櫨紅葉
それまで曼珠沙華を見ても不思議な花だな、と思う程度でしかなかったが、退院後にたくさん団地内や道端に咲いていたので注視するようになった。いろいろな角度から眺め、周囲の風景との対比を楽しんだ。朝・昼・夕の光を受けた表情の変化も楽しんだ。一番の発見は、曼珠沙華は咲く場所を自分で選んで、ひょっとして私の好みにあわせて咲いているのではないか、ということだ。
植物だから移動するわけではないが、「ここにあったらいいな」という場所に生えている。それは他の場所に根付いても、環境の微妙な差で咲くことができずにいるために結果として、私の思いの場所に咲いてくれているのではないか、という想念だ。
庭で言えば端の方の少し斜面になって道路などに面して、樹木の陰がなく少し日当たりのいいところ。祠などが放置されるようにある敷地の入口で明るく水はけのよさそうなところ。坂道の途中の人家の塀が途切れて、誰も手入れをしないようなところ。
歩行していてなぜかふと歩をとめて周囲を見渡すと目に飛び込んでくる。ゆったりした歩行をするようになって初めて、曼珠沙華を細かく観察した。特に下から見上げる視点は気に入った。秋の雲との配合は見事だ。朝の内の雨の後、細い蘂に張り付いた雫に雲が映る様は、雨後の明るい世界を存分に満喫させてくれた。
住宅地に取り残されたような一角に、立派な墓が立っていた。彼岸の花とともに、立派な志野焼の椀に水が備えられていた。かすかな志野焼特有の赤と、墓の入口にいさぎよくくっきりした色合いで咲く曼珠沙華の赤が響きあっているようで美しかった。こんな墓の傍にしばらく座っていたかったが‥。
退院後、東北の温泉に向かったが、単線のゆったりした速度でトンネルを抜け出ようとしたとき、光の向こうに櫨紅葉の明るい色が目に飛び込んできた。こどものように列車の先頭に立ってワクワクしていた私の目には、生の謳歌のように力強く映った。