Fsの独り言・つぶやき

1951年生。2012年3月定年、仕事を退く。俳句、写真、美術館巡り、クラシック音楽等自由気儘に綴る。労組退職者会役員。

自句自解(13) 冬の宿

2010年02月23日 23時57分00秒 | 俳句・短歌・詩等関連
★櫁柑摘み夕餉のけむりを見おろせり
★冬嵐列車めがけて海騒ぐ
★冬の宿下駄の音乾きし音鳴らし
2002年師走、熱海に向かう。
 夕刻、蜜柑畑の上で蜜柑の収穫をしていたらしい女性が、畑を足早に降りていった。夕餉の支度のためか、日没の暗さへの不安のためか、天候の不安のためか、判断はしかねたが。蜜柑の黄色が印象的な景色であった。
 真鶴あたりにて、天候が悪く海が荒れていた。日がとっぷりと暮れて押し寄せる波の音だけが列車の中まで聞こえてきた。とてつもなく大きなものが押し寄せて来るように感じた。
 宿についてから夜半にはガラッと天候は回復し、乾いた冬の季節風に変わった。露天風呂に行く道の土は湿っているのに、また湯煙にもかかわらず、下駄の音だけは冬の季節風に乾いたひびきに聞こえた。
 年末に投薬のための二回目の入院を控え、副作用のつよい薬への恐怖と不安が増幅していた。そんな不安が冬の嵐の音をさらに重く響かせる要因であった。