Fsの独り言・つぶやき

1951年生。2012年3月定年、仕事を退く。俳句、写真、美術館巡り、クラシック音楽等自由気儘に綴る。労組退職者会役員。

自句自解(10) 病後拾遺

2010年02月16日 00時26分17秒 | 俳句・短歌・詩等関連
★路地を抜け富士より高き夕すすき
★穂にひかり溜めて傾く花すすき
★病癒え微かに虫の鳴き始め 
★蜉蝣の羽を透かせば妻の顔
 これはようやく杖を手放した頃の散歩のときの句。西向きの高台から秋の夕方の富士を見たとき、その鮮やかな色彩に心を惹かれると同時に、うつむきながら歩いていた姿勢から、背筋を伸ばした姿勢に自然に変わった自分に気づいた。薄いオレンジ色を背に、丹沢と会話をしながら立っている富士には、動じない静かな確かさを感じた。光を溜めたすすきがよく似合うとも感じた。
 二句目、言い古されているような表現だが、初心者の私には自分で探し当てた表現なので愛着がある。「傾く」が私なりに見つけた表現。光の存在の確かさを込めた積もり。
 三句目、先の「病む我と同じ呼吸で秋の蝉」と一緒に作った。夜になると虫が鳴き始めていることに気づいた。鳴き始めた虫の声、さびしい声であると同時に、次第に生に満ち溢れた声になってくる。
 入院前も入院中も、退院後も妻には頭があがらない。杖をついた散歩から妻と玄関にたどり着いたときに、玄関扉に蜻蛉が止まっていた。薄い頼りげのない羽だが、私に比べると強くしなやかに見えた。妻と二重写しに見えた記憶がある。

 病気を契機に俳句を作り始めたが、その時期の俳句はとりあえずこれで終了。ながらく私の病の経過につきあっていただき感謝。当時の自分を思い出すことができた。
 以後はよろよろしながらも日常生活に戻って俳句を続けた。しばらくしてからこのシリーズの再開を予定している。
目を通していただき、ただただ感謝あるのみ。