Fsの独り言・つぶやき

1951年生。2012年3月定年、仕事を退く。俳句、写真、美術館巡り、クラシック音楽等自由気儘に綴る。労組退職者会役員。

自句自解(17)  乗鞍岳

2010年03月18日 23時24分47秒 | 俳句・短歌・詩等関連
(2003年8月乗鞍岳山行)
ハンミョウや雲より白き道を行く
登り来て谷戸の稲穂に風起こる
尾根に出て微かに秋の風となる
雪渓の滴る音も星の下
寝眼下信濃岩に滲みこむ黒き汗
転べば峰より峰へ天の川
雷鳥の軽く跳ね越す火山岩
長尾根の尽きる山里蕎麦の花

 乗鞍岳の登山での作。この頃になって少しずつ俳句を作ることの楽しみが出てきたように思う。
 一句目、バスの通る林道が蛇行している。林道は旧来の登山道をずたずたに引き裂いているため、アスファルト舗装された林道を延々と登る破目となっている。舗装路が太陽の光を受けて熱く白く輝く中を進んでいくのだが、突如鮮やかな色をしたハンミョウが出てきて触覚を大きく振りながら私の前を歩き始めた。「道教え」の由来そのもののように私の前を歩いていく。途中で見失ってしまったが、とても親しみを覚えた。味気ない舗装路を行くとき、このようなハンミョウなどの小さな動物や植物はとても親近感を覚える。
 二句目、舗装道の脇に谷戸があり、小さな田んぼに8月の風がやさしく吹いていた。人も住まなくなった空家はあったが、田んぼに稲穂が揺れていた。あたかも空き家から人が出てきそうな雰囲気の中で。
 三句目、ようやく尾根に出て、気持ちの良い風を全身で受けることができた。乗鞍岳という山の大きさを実感した一瞬。
 六句目、頂上の小屋での作。山での星の美しさは誰しもが肯うところ。大宇宙を両手に受けて大の字に仰向けでその大きさを実感してみた。林立する山の稜線の崖が、大きく黒くのしかかるように迫ってきた。この覆いかぶさってくる荒々しい岩肌の雰囲気が伝わっていただければ嬉しい。
 八句目は下山道の最後に近い場面。人里近くなって畑が目に付くようになった。長い尾根を歩き通してようやく人家と畑を目にした時、蕎麦の花の白さが目に焼きついた。