Fsの独り言・つぶやき

1951年生。2012年3月定年、仕事を退く。俳句、写真、美術館巡り、クラシック音楽等自由気儘に綴る。労組退職者会役員。

自句自解(19) 湖東三山

2010年03月20日 11時24分56秒 | 俳句・短歌・詩等関連
桐葉落つ深夜に書籍閉じる音
秋の昼舫の音の途切れつつ
 比叡・東近江・湖東三山
手に取ればくずれず重き熟柿あり
茶の花を濡らし朝靄平らかに
風一陣蓮華の台座に紅葉散る

 一句目、夜中に一息つこうとして本を閉じたが、その音が団地の間を響いたようにも感じた。団地の中の桐の木の葉が路面をかすかな風に吹かれて移動する音と錯覚したのかもしれない。
 二句目、大桟橋の近く、現在再整備が完了した像の鼻地区の再整備前はいかにも古く、忘れられた一角のようにはしけや古い船が舫われていた。ゆったりとした波に揺れる船と舫の軋みの音が、うれしかった。

 2003年の秋、妻と滋賀県を訪れた。秋の気配濃厚な琵琶湖の周辺をのんびりと巡った。
 三句目、まだ早い朝、道端の農家の庭にいくつかのすっかり熟した柿が重くなっていた。鳥がつついた跡が残っているものばかりであったが、手に届くもの傷も無く丸々と艶やかであった。手を伸ばし、その重みがうれしかった。表面の冷たさの奥に、温かみを感じた。柿の生体反応とでもいうべき体温を感じた。
 四句目、湖東三山付近のなだらかな山の長い裾野に沿って茶畑が連なって私の足元まで連なっていた。遠くは朝もやが平らに裾野に沿って出ていた。低山の紅葉の色と白い朝もや、そして足元の茶の白い花と、色の変化に目を奪われた。
 五句目、どのお寺であったか、風の一陣が寺全体に、山門にも本堂にも紅葉の葉を散らしていた。その量の多さとゆったりと落ちる様にほっとした。