Fsの独り言・つぶやき

1951年生。2012年3月定年、仕事を退く。俳句、写真、美術館巡り、クラシック音楽等自由気儘に綴る。労組退職者会役員。

「定家明月記私抄 続編」 その1

2020年08月24日 20時48分11秒 | 読書

 「続編の序」は、良くまとまっており、堀田善衛の日本の歴史と西洋の歴史の同時代性把握を要領よく表現していると思う。
 これは私の大筋での問題意識と重なっている。絵画作品を見るにつけ、この地球上にどんと存在する大きなユーラシア大陸の東西の両端における同時代性への着目は、人類史という大きな枠組みで考えた場合にとても魅力的な視点だと思っている。

「鎌倉時代初期、すなわち十三世紀初頭と、西欧での十三世紀とに、言うまでもなく種々様々な相違、違和はあるものの、大凡のこところていうことにするならば、むしろ双方の相似、共通性の方に強く印象付けられ…。

「例えば宗教の問題。中世にあっては、宗教は人間世界の一切に関して、根源的かつ人世の全般を蔽う大問題であった。それは西欧たると、日本たるとを問わない。しかも西欧に普遍公定(カトリック)の宗教があり、これに対してワルドオ派やカタリ派などにみられるような、‥異端派が続出‥。日本にあっては、国家宗教としての仏教と、法然、親鸞、日蓮などの、個人救済を旨とする新興宗教が台頭しはじめ、これに対する国家宗教と宮廷から発する弾圧は、これは要するに異端追求である。‥救済への情念の激しさと共通するものを見させるものであった。ただその後の推移において、日本はまことに独特である。国家宗教は、皇室の衰退とともにほとんど形骸化し、法然、親鸞、日蓮などの、かつて異端視されたものが主流を占めて行く。」

「政治においての、西欧封建王制の成立と、その領主たちの頭領としての国王国家への過程というものが、日本における武士たちによる幕府形成と、実に、あたかも並行しているかとさえ思われて来るのである。ここでも京都宮廷の名目化、ほとんど有職故実の存続だけを目的としているかに見える有様は、この並行からはずれているであろう。はずれていることによってその存続が保証されたという特異性がある。」
「文芸の世界においても、新古今集などの和歌の大成期と、西欧においての、いわゆる吟遊詩人たちの勃興期というものが、ともに十三世紀であったということも気を牽く‥。」

「これは並行などという現象面のことなのではなく、この世界の人間の歴史が中世にあって、人間そのものとして存在し、かつ進行していた‥。」

 以下本日読み終わったのは、「公卿補任 建暦元年記」、「歯取リノ老媼ヲ喚ピ、歯ヲ取ラシム 建暦二年記(1)」、「旅芸人と天皇 建暦二年記(2)」。
 「旅芸人と天皇」では、網野善彦から大きな影響を受けたことを記述している。網野善彦の「中世の非農業民と天皇」を引用している。



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