こんなにも長かったかな、と思うくらいの夕暮れ時の影を久しぶりに見つけた。
現役のころ、冬の現場歩きはつらかった。それなりに歩くので寒さはあまり気にならなかった。しかし冬の夕方に西に向かって延々と歩くときがつらかった。それは眩しさである。
夕陽が直接顔を照らすだけでなく、道路上のマンホールが夕陽を受けて輝くので、直射日光だけでなくその反射光も加わり眩しかった。前から来る自動車が怖かった。向かってくる車が見えないのである。
そして夕刻というのはさんざん歩いて草臥れたころであり、爪先の内側に鉄の覆いが付いている安全半長靴のため靴がさらに重く感じた。足を引きずるようにして、職場に戻った。
徒歩による道路パトロールなどがちょうど冬の季節に恒例のように行われた。車の運転をしない私はいつも職場から近い場所を歩くが、カーブミラーの支柱の錆を調べるために36cmほどのバールと点検票を持ち歩く。バールを持っているので草臥れてもバスに乗車するわけにもいかない。一度疲れてバスに乗車したら、他の乗客が私の周りから離れていった。怪しい人間と認識されたようだった。それ以来地下鉄もバスも利用しなくなった。
しかも古手なので、職場から近いけれども広範囲を担当させられる。それはやむを得ないのだが、確かにかなりの時間と距離を歩くので帰りはきつかった。
登山やジョギングで鍛えていても、アスファルトの上を安全半長靴で歩くのと、登山で山道を歩くのは違う。軽い運動靴で走る衝撃ともまた違う負担が足首や膝にかかっていた。
今となっては楽しい思い出である。
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