★細き雨たっぷり溜めて萩垂れる
★萩散りて池深きより静まりぬ
★萩散りて緑の水面を染め分ける
夏の雨と違い秋の雨はものさびしいもの、と歳時記には規定されている。私にはこの断定はちょっと首を傾げたくなる。こんな規定をおしつける俳句の世界こそ、俳句の停滞をみずから招来しているのではないのかと思う。
それはそれとして、入院前には激しい梅雨明けの雨が印象に残ったが、退院後の療養期にはしっとりした雨が身をつつむように思えた。土日は無論、それ以外にも平日は一日休むことも幾週間が続けた。そんな折、雨が静かに降っているのを自宅の寝室から眺めていると、気持ちが静まってきた。時折団地の中を傘をさしてゆっくり見て回った。
団地の中に石垣があり、上から萩が気持ちよさそうに垂れている。黒い石垣に緑の葉と赤と白の萩が並んで、雨を溜めて多少の風にはびくともせずに重く垂れている。そんな風情をじっと眺めるなんてことはこれまでなかった。
また池があり、水の循環もなく静かに深い緑色によどんでいる。そこにも萩が垂れていた。
情景としてはどこにでもある情景だが、回復期の私には静かな秋に、存分に身に委ねることができた。「池深きより」がとても気に入っている。
★萩散りて池深きより静まりぬ
★萩散りて緑の水面を染め分ける
夏の雨と違い秋の雨はものさびしいもの、と歳時記には規定されている。私にはこの断定はちょっと首を傾げたくなる。こんな規定をおしつける俳句の世界こそ、俳句の停滞をみずから招来しているのではないのかと思う。
それはそれとして、入院前には激しい梅雨明けの雨が印象に残ったが、退院後の療養期にはしっとりした雨が身をつつむように思えた。土日は無論、それ以外にも平日は一日休むことも幾週間が続けた。そんな折、雨が静かに降っているのを自宅の寝室から眺めていると、気持ちが静まってきた。時折団地の中を傘をさしてゆっくり見て回った。
団地の中に石垣があり、上から萩が気持ちよさそうに垂れている。黒い石垣に緑の葉と赤と白の萩が並んで、雨を溜めて多少の風にはびくともせずに重く垂れている。そんな風情をじっと眺めるなんてことはこれまでなかった。
また池があり、水の循環もなく静かに深い緑色によどんでいる。そこにも萩が垂れていた。
情景としてはどこにでもある情景だが、回復期の私には静かな秋に、存分に身に委ねることができた。「池深きより」がとても気に入っている。