日本料理を代表する豆腐とこんにゃくについて考察してみよう。
豆腐の原料は大豆である。
大豆は、花もきれいであり、実も丸くて愛らしい。
豆腐は、御壁(おかべ)という雅(みやび)な名前でも言われるように、色が白く、木綿や絹にも形容される。
豆腐料理は、生でよし、煮てよし、焼いてよし、揚げてよしと万能選手である。
酢飯と組んで、稲荷寿司という、いい仕事もする。
レシピは何百とあるだろう。
庶民的な食べ物であると同時に、京都では高級料理としても供される。
このように、豆腐は日本料理界のトップスターといっていいだろう。
一方、こんにゃくはどうか。
こんにゃくは漢字で蒟蒻と書くが、誰も書けない字である。
こんにゃくの原料はこんにゃく芋であるが、植物のこんにゃくはマムシグサに似ており、新芽はやや不気味である。
同じ芋仲間のじゃがいもやさつまいもは、愛らしさもあるが、こんにゃく芋は黒くごつごつした形で、不細工である。
芋から加工されたこんにゃくも、色が黒くて見栄えが悪い。
豆腐は良質な植物性たんぱく質の食べ物だが、こんにゃくは栄養的にはほぼゼロである。
こんにゃく料理といえば、おでんや煮物がほとんどである。
おじさん好みの食べ物であり、おしゃれな食べ物とはいいがたい。
これではいけないと、こんにゃくは考えた。
栄養がないのを逆手にとって、ノンカロリー食品、ダイエット食品として売り出したのだ。
飽食の国ニッポンではこれが女性に受け、こちら方面に活路を見出しているようだ。