メランコリア

メランコリアの国にようこそ。
ここにあるのはわたしの心象スケッチです。

『四又の百合』宮沢賢治/著

2011-04-20 23:19:44 | 
『四又の百合』(未知谷)
宮沢賢治/著 たなかよしかず/版画

「正へん知(しょうへんち)はあしたの朝の七時ごろヒームキャの河をおわたりになってこの町にいらっしゃるさうだ」

まるで魔法の呪文のように繰り返されるこの言葉。
ハームキャの城下町の人々は、一斉に身の回りをキレイに掃き清め、迎える準備をする。
王さまですら「子どものようにいそいそして」臣下に大掛かりな準備を命じ、自ら河岸まで迎えに行くと決心する。
一睡もできずに翌朝になり、季節の百合をひと茎探してくるよう大蔵大臣に言う。
裸足の村の子どもの持つ立派な百合を売ってくれと頼むほのぼのとしたやりとりが、全然横柄じゃなくて気持ちがいい
見事な百合に王さまも満足すると、河向こうが輝きはじめる・・・


たったこれだけの短い話の中にハッと息を飲むような、ひたすら純粋な感動があふれている。
ああ、やっぱり賢治は素晴らしいストーリーテラーだ!

それにヒケをとらない、たなかさんの木版画1点1点が、とてもシンプルでムダがなく、
白黒でここまで温かみが出せるものかと魅了された。
ラストの1点のみ、目にも鮮やかに輝く色がまぶしい。
いまのところ未知谷の本にハズレなしv


「川の向ふの青い林のこっちにかすかな黄金いろがぽっと虹のやうにのぼるのが見えました。
 みんなは地にひれふしました。王もまた砂にひざまづきました。
 二億年ばかり前どこかであったことのやうな気がします。」


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『見えない道のむこうへ』(講談社)

2011-04-20 23:13:39 | 
『見えない道のむこうへ』(講談社)
クヴィント・ブーフホルツ/作 平野卿子/訳

クヴィント・ブーフホルツ
そっか、『黒猫ネロの帰郷』や『ペンギンの音楽会』の挿画を描いてた人だった!
文章もいっしょに書いているから、絵と絶妙に絡み合って、
音楽と絵を愛する人間同士の交流が、ゆったりとした時間の流れの中で描かれている。

あらすじ
ちょっと小太りで、古風なメガネをかけ、バイオリンを弾くのが上手い少年のことを、
画家のマックスは親しみを込めて「教授」と呼び、いつでもアトリエに遊びにきてもいいと言った。
少年はマックスが絵を描くところを見るのが好きだったが、画家は絵が完成するとすぐ裏返しにして、決して人には見せなかった。

時にはふっと旅に出てしまい、いつ戻るかも分からない。
ある時、留守番を頼まれて、アトリエに入ってみると、
これまで話してくれた不思議な「雪象」や「空飛ぶカート」などが描かれた絵がすべて表向きに飾られていた。
それは少年にだけ開かれた展覧会だったのだ。

絵に長く浸っているうちに、フシギな光景もすっかり馴染んでしまった頃、
マックスはフラっと戻ったかと思うと、南のほうへ引っ越すと言った。
「ひとつところに長くはいられないんだよ」
彼が去ったあと、部屋には太った夫婦と男の子、犬が住むようになった。。

少年のもとにマックス1枚の絵が送られてきて、そこには小太りでメガネをかけた少年が、
海岸に置かれた赤い椅子の近くでバイオリンを弾いている絵だった。
少年は大人になり、父となり、音楽教師となった今でも、その絵を大事に飾っている。


丁寧に描かれた絵はどれも、文章といっしょにいつまでも味わって、何度も眺めていたくなるものばかり。
ブーフホルツ自身も音楽の道に進むか、芸術の道に進むか悩んだ時期があったという。


p.42
「どの絵もけっしてすべてをあかそうとはしない。作者であるぼくにも。
 ひょっとすると、描いた人間より、他人のほうがずっと多くのものを見出すかもしれないんだよ」

p.67
物語のはじめに置かれているセピア色の絵は、いわば序曲のような役割を果たしているともいえ、ブーフホルツは、自分の絵に音楽を奏でさせることによって、「瞬間」に継続性を、「固定」に流動性を与える試みをしたのかもしれません。


無窮=果てしないこと。また、そのさま。無限。永遠。
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『江原啓之神紀行5 関東・中部編』

2011-04-20 21:25:42 | 
『江原啓之神紀行5 関東・中部編』

前回の湯田中への鉄道の旅で味をしめて?、まだまだ鉄道を利用すれば行ける場所があるんじゃないかと調べてたところ、
地元の「戸隠神社」や「諏訪大社」も有名なのにまだ行ったことないなと思い当たった。
で、こないだ八重洲ブックセンターをざっと見て回ってたら、江原さんが書いてる本を発見。
思わず長々と立ち読みしてしまったが、改めて図書館で借りて読んでみた

「スピリチュアル・サンクチュアリ」シリーズの第5弾にしてラスト。
先日も行った大宮の「氷川神社」、赤坂にある「日枝神社」、深川の「富岡八幡宮」などなど、
身近な神社・仏閣がたくさん紹介されていて、改めてスピリチュアルな視点から考えても良い場所なんだなと再認識した。

中部は日本列島のヘソ部分。特に「戸隠神社」は山深くにあるため、昔からの神気がそのまま保たれていて、
江原さんいわく「これまでの中で最も素晴らしい場所」と大絶賛していた/驚
お蕎麦を食べに何度か戸隠には行ってるけど、神社には行ったことなかったなあ!
駅からバスで1時間で行けちゃうんだ。
でも、本社、中社など全部回るには厳しい登山ぐらいの決意が必要みたい

「諏訪大社」は神木が素晴らしく、周囲にはフェアリーが舞っているんだとか

最後の「ミニ知識」コーナーでは、江戸も京都と同じく都を造る際に、徹底した風水を考えて護られていると書いてあった。
江戸城の鬼門(東北)を護る上野の東叡山寛永寺は、そいえばブラタモリでも紹介してたな。

他にも、「諏訪大社」の古代信仰は、ミシャグジ信仰だとか、
土地の料理を食べたり、温泉に入るのも良いことだとか、
諏訪湖の「御神渡り(おみわたり)」、戸隠の「鬼女紅葉」伝説、
蕎麦は平安時代の修行僧の携帯食だったとか、
戸隠は忍者の里だった!とか、地元でも知らない知識が載っててビックリ。

シリーズ1~4も気になるところ。

追。
表紙写真の写真はすごいスリムなのに、中を開くといつもの恵比須顔w
いわく、取材中に地元の方から美味しいものをたくさん頂いているうちに、
すっかりリバウンドしてしまったんだとか




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