メランコリア

メランコリアの国にようこそ。
ここにあるのはわたしの心象スケッチです。

『オツベルと象』宮沢賢治/作

2012-03-13 21:42:05 | 
日本の童話名作選『オツベルと象~ある牛飼いがものがたる』(偕成社)
宮沢賢治/作 遠山繁年/絵

▼あらすじ
地主のオツベルは、大勢の使用人を使って、自分は贅沢な暮らしをしている
ある日、突然、白象が入ってきて、みんなビックリしたが、
オツベルは平然を装って「ここは楽しいかい?」と聞くと「楽しい」と答えるので、
「しばらくいたらいい」と誘って、巧みに足枷やらを付けて働かせた。
最初は、働く楽しみを味わっていたが、エサがどんどん少なくなり、
労働は厳しくなり、とうとう白象はとても衰弱してしまう・・・


賢治は、こんな異国風の話も書いたんだなあ!
どこの国でも、一部の富裕層(地主)が、大勢の使用人を奴隷のようにこき使う様子は、
当時の日本でもよく知られていたんだろうか?

陽気で、優しい白象が疲れ果てて「苦しいです。サンタマリア」とつぶやく場面は切な過ぎる。
でも、ちゃんと神さまが仲間たちに報せてくれて、助けてくれる。
「よかったね やせたね」と気遣う仲間たちの優しいこと!
これも素晴らしい物語りだった。

けっこう探して読んだと思っていたけど、まだまだ読んでいない賢治の絵本があるなら、全部読みたい。
独特な言葉づかいや、擬音の楽しさ、旧仮名の深い味わいも、賢治童話の大きな魅力だ。

インド風の素朴な挿絵にも味があって、物語りに合っている。

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チェーホフ『ワーニカ』(未知谷)

2012-03-13 21:42:04 | 
チェーホフ・コレクション『ワーニカ』(未知谷)
アントン・P.チェーホフ/作 イリーナ・ザトゥロフスカヤ/絵 児島宏子/訳

2012.2.15発行。ついこの間出たばかりの新作が、もう図書館の棚に並んでいたので、すぐに借りた

▼あらすじ
ワーニカは、地主の掃除婦をしていた母を亡くして、同じく使用人の祖父のもとに身を寄せたが、
わずか9歳で、モスクワの靴職人の家に奉公に出された。

クリスマスの晩、ご主人らがミサに出ている間、くしゃくしゃの紙に手紙を書くワーニカ
そこには、毎日ロクな食べ物も与えられず、ムチでぶたれ、気を失うほど靴型で殴られて、
「犬よりひどい暮らしです。どうか大好きなおじいちゃん助けて!」という心からの叫びだった。

近所の肉屋さんから、「手紙はポストに入れれば、どこにでも届く」と聞き、
「村のおじいちゃんへ」と宛名を書いて、切手も貼らずに、大事な手紙をポストに入れたワーニカ。


物語りはそこで終わっていて、果たして、手紙がその後どうなったのかは書かれていない。
「マロース(厳寒)爺さん」と擬人化されて呼ばれるほどのロシアの冬の寒さが文章からもひしひしと伝わってくる。

奇しくも、この前に読んだ『オツベルと象』と同様に、不当な扱いを受ける労働者
(しかも、こんな小さな子どもまで!)の厳しい社会環境を描いた話が続いた。
そして、訳者によるあとがきには、今でも幼い子どもたちが過酷な労働を強いられている国は多いと書いている


少年が思い出すお爺ちゃんの温かい人柄がステキだった
飼っている雌犬の名前が「ドジョウ」って!w
(わんこ&にゃんこの名前で、食べ物の次に好きなのは、別の生物の名前が付けられたコ
でも、このドジョウさん。隙あらば鶏を盗んだりするイタズラ者だから、
足が折れるほどムチでぶたれたり、逆さに吊り下げられたり、叱り方がまるで拷問だ/涙
それでも、フシギとすぐに元気になって悪さを繰り返す生命力の強靭なコなんだよね/驚

挿絵はいつものイリーナさん。墨で描いた太い線で、見事に物語りを絵で表現している。
今年、新潟の「水と土の芸術祭」に招かれて初来日したらしい



▼その他メモ
『ねむい』:同じく子どもの問題を書いたチェーホフの短編。

「歴史を検見(けみ)して~」 検見=実際に見て調べること。

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