日本に与えた影響
『平和主義』をうたった日本国憲法施行後はじめての日本国による船体射撃であった。そのため左派政党をはじめとする、いわゆる「護憲派」が激しく非難した。しかし、北朝鮮工作機関の犯罪行為が白日の元にさらされた事は、拉致問題に揺れる日本の世論にさらなる影響を与えた。海上自衛隊は海上警備行動こそ発動しなかったが、海保と連携して対応に当たった。一連の不審船事件は海上防衛の在り方にも一石を投じた事件であった。海上保安庁は今回の事件を教訓に、現場の海上保安官(乗組員)の生命保護のため巡視船艇の防弾化及び相手船舶を安全な距離から停船させるために高機能・長射程の機関砲の搭載、船艇の高速化、航空機の輸送力アップ等を急速に進めることとなった。また、一部航空基地に配属が進んでいる機動救難士の発足の理由の一つとして、救急救命士資格を持った機動救難士による現場海上保安官の直接救護の目的もある。海上保安官に対しては、性能のよい防弾ベストを支給し、対テロ戦闘の訓練を行わせている。法整備も進められ、停戦を拒否する不審船に危害射撃を可能とする海上保安庁法改正案が提出され、社民党以外の賛成で可決された。現日本財団では、この事件をきっかけとして、海上保安協会とともに海上保安庁公認の防犯ボランティア組織「海守」(うみもり)を結成し、工作船への警戒や海の事故への注意を呼び掛けている。海守の会員は、日本全国で約6万人が加入している。極少数の左派団体や左派知識人の中には、漁業法違反という名目での初動捜査や、まだ工作船から武力攻撃を受けていなかったにもかかわらず「先制攻撃的」に船体射撃を行ったことを、法解釈の間違い・違法な戦闘行為と主張している者もいる。(注)日本が批准している国連海洋法条約を直接適用できる為、船体射撃は法解釈的にもなんら問題はない。