Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

四月怪談

2013-06-10 | 映画(さ行)
■「四月怪談」(1988年・日本)

監督=小中和哉
主演=中嶋朋子 柳葉敏郎 角田英介

 ある人の薦めで昨年観て、えらく感動した映画に「ワンダフルライフ」がある。天国に召される前の死者たちをめぐる秀作であった。この「四月怪談」に出てくる柳葉敏郎扮する幽霊は、まだ肉体に戻って生き返るチャンスがあるの死者たちに肉体に戻るように説得をしている。彼自身も大切な人に何かをしてあげる経験なしに死んでしまったので、死後80年に渡ってそうした説得をしている・・・という設定だ。成仏させることが仕事の「ワンダフルライフ」の職員たちとは全く逆なのだが、その事を通じて自分も救われるという点では同じ。見終わってこちらも不思議な幸福感に浸ることができる。近頃、僕はこの映画の監督小中和哉氏に興味がある。それは「ウルトラマンガイア」の劇場版や2003年に放送されたアニメ「鉄腕アトム」で(恥ずかしながら)気に入ったからだ。

 世間的にはファンタジーの名手という評価のようだが、僕が勝手に抱いている小中作品のイメージは、”テクノロジーと人間”を一貫したテーマとしていること。「四月怪談」はそれとは全く異なる世界。なれどこの映画にもそうした要素がある。ヒロインに好意を抱く超常現象好きの男子高校生だ。幽霊探知機を製作する程の変わり者で、彼の霊感(?)がクライマックスで重要な役割を果たすことになる。霊とのコンタクトにテクノロジーを用いようとした彼が、死者の気持ちを思いやるという人間的行為でヒロインを救う(結果的にだけど)姿はとても印象的だ。小中監督は特撮映画に憧れて映画界入りしたそうだ。部屋にラドンを飾るこの高校生はもしかしたら監督の分身かもしれない。その彼とその後いい仲になりました・・・ってな結末にしていないところが、人によっては物足りなさを感じさせるかもしれない。それよりも水たまりを踏みつけるヒロインの何とも言えない表情が余韻を残してくれる。

(2004年筆)



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