Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

噂の二人

2013-06-25 | 映画(あ行)



■「噂の二人/The Children's Hour」(1961年・アメリカ)

監督=ウィリアム・ワイラー
主演=オードリー・ヘップバーン シャーリー・マクレーン ジェームズ・ガーナー

 ウィリアム・ワイラー監督作といえば「ローマの休日」だの「ベン・ハー」だのメジャーな名作が知られている。一方で、地味なんだけど忘れがたい作品もある。例えばボギーが悪役を演じた「必死の逃亡者」や、ストーカー犯罪を描いた先見的傑作スリラー「コレクター」。僕は前者の作品も好きだが、後者の作品にも惹かれずにはいられない。「噂の二人」もそのヘビーな題材、作風から後者のものである。この主演女優の顔ぶれ、これで監督がビリー・ワイルダーなら間違いなくコメディなんだろうけど。

 「噂の二人」は同性愛者と疑われた二人の女性を主人公。リリアン・ヘルマン(「ジュリア」ではジェーン・フォンダが彼女を演じた)原作の舞台劇「子供たちの時間」二度目の映画化である。今でも同性愛というと偏見めいた視線がむけられる。この物語はイギリスかどこかで実際に起こった出来事を元にしているとか。噂とは恐ろしい。そしてそれを鵜呑みにしてしまう、世間という名の集団の恐ろしさ。「過去はついてまわるのよ」とはオードリーの台詞だが、”人の噂も七十五日”なんて大嘘なのかもしれない。

 その騒ぎの中で、次第にシャーリー・マクレーン扮するマーサは、オードリーへの思いが実は恋心であると自覚していく。そして彼女は・・・。このあたりのシャーリー・マクレーンの演技は真に迫る。シリアスな役柄をこなすオードリーも見事だ。同じ年に「ティファニーで朝食を」と撮影していると思うと、その演技の幅広さに感心する。ラストシーンで胸を張って皆の前を去る姿は強く印象に残る。ワイラーの演出も見事。特に首を吊ったシャーリー・マクレーンを直接見せることなしに、観客を納得させる見事なショット!倒れた椅子、足先の陰、戸口でそれを見て嗚咽するオードリー・・・これがひとつの絵だから恐れ入る。たまにこういう映画観ると、今の映画が、いかに作りが荒いかよくわかる。

(2003年筆)



コメント (2)
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