■「海猿」(2004年・日本)
監督=羽住英一郎
主演=伊藤英明 加藤あい 藤竜也
思っていたよりも面白かった。しっかしクサいね。涙と感動を強引にさらっていくようなこの作風!。つーか僕が日頃こういうTVドラマの延長みたいな日本映画を見ていないからなのかな。ジャーニーを、しかも Open Arms を主題歌にしたせいで、それがますますクサくなる(決して Open Arms が悪いのではありませんよ)。また、この手の青春映画にありがちな”成長物語”という要素があまり強くないのが、今ひとつ盛り上がらない、スカッとしない理由でもある。主人公はダイビングの資格を持っている設定だから最初から”できるヤツ”。成長物語的要素がバディを失ってからの精神面のみに集中される。”成長物語”としての爽快感がこの映画には欠けているのだ。
されどこの映画決して飽きさせない。それは訓練場面への観る側の興味もあるだろうし、海上保安庁の協力で撮られた迫力ある映像があるから。伊藤英明クンは役者としてはちょっと・・・でもかっこいいから許される。加藤あいチャンの可憐さと藤竜也の助演が素晴らしいのもこの映画が引き締まって見える理由だな。
話は違うが、先日僕はお仕事で検察庁に出かけた。そこでとある検事さんのお話を聞くことが出来た。公務員として働くとはどんなことなのか・・・いろいろと語っておられた。どんなに頑張っても弁護士とは違うから金にはならない。しかしその分だけ損得勘定抜きで仕事に立ち向かえるんだ、とおっしゃった。でも最前線は決して面白いものではない。ドロドロした人間関係を見ることもある現場だ。はっきりはおっしゃらなかったが、事件の裏にある人間の心に触れることが自分にとてもプラスになっているのだと思う。それ故に検事さんの人を見る目は厳しいけれど優しい。人が好きだから、金で左右される弁護士ではなく検事の道を選んだのだろう。僕にはそう思えた。「海猿」でも公務員として働くことの意味・厳しさが少しだが見え隠れする。「お前らは奉仕者なのに民間人と喧嘩するのか!」と罵られる場面、「訓練生は潜水士ではない」と規則に縛られる場面。同じ潜る仕事をするだけならば友人が誘うようにダイビングのインストラクターにもなれる、金にもなる。しかし主人公は海上保安官として潜ることを決意する。それは人を失いたくないという気持ちから。ここにも人が好きな公務員がいた。それが少し嬉しかった。
(2005年筆)