70年代末期から80年代初めを少しでも知る方ならご存じと思う。当時、本編に全く関係のないイメージソングなる曲が、映画宣伝やエンドロールに付けられることがよくあった。最近でも、日本版だけ「007/ワールド・イズ・ノットイナフ」のエンドロールに何故かLUNA SEAが流れたり、韓国映画「TSUNAMI」ではAKB48が流れたりもした。また80年代には、ジャッキー・チェン主演作では日本独自に主題歌がつけられていたりもする。あれもその類だけど、当時のイメージソングたちは今とは違う。本編で流れないのだ。映画予告編に使われたイメージソングで、最も有名なものが「ナイル殺人事件」の Mystery Nile だろう。♪みーすてりー、なぁ~いる というそのフレーズはニーノ・ロータのスコア以上に有名で、何を間違ったか映画音楽全集みたいな企画ものレコードにも入っている程だ(無論日本だけだが)。このように強烈なインパクトで本編の音楽を食ってしまったものも多いのだ。
・・・前置きが長くなったが、われらがダイアン・レイン主演作「リトル・ロマンス」の宣伝にも、そうしたイメージソングが使われた。モデルとしても活躍したサビーネ金子を中心とした日本のグループ、パオが歌う Sunset Kiss なる曲である。哀愁漂うメロディは当時の僕らに強く印象づけられたものだった。本編はジョルジュ・ドリュリューのスコアとビバルディなどクラシックが使われていて、これも素晴らしい(アカデミー音楽賞受賞)。しかし、日本ではCFで大量オンエアされていたから、Sunset Kissの方が焼き付いている人、きっと多いと思うのだ。
ラストのグッと抑えた大人の恋愛劇は見事というよりない。エンドクレジットにかぶさる ♪Acroos 110th Street をパム・グリアが口ずさみ始めたとき、僕は涙があふれそうになった。いやマジで。銃紹介ビデオ見ながら熱っぽい説明をするサミュエル・L・ジャクソンは観客を引き込んでくれる。「香港映画の影響で二丁拳銃が流行る」って台詞や、ブリジット・フォンダが親父主演の「ダーティ・メリー・クレイジー・ラリー」を見る場面は、映画ファンの心をくすぐってくれる。ところで、サミュエル・L・ジャクソンがかぶっていた(パム・グリアがかぶっている場面もあった)カンゴールのハンチングはいったい何色あるのだろう?。
一時期、マドンナと人気を二分した女性アーティストと言えばシンディ・ローパー。ビジュアル面でも"Unusual"だった彼女だが、パンク系ファッションにオールディーズ的味付けを施した独自のスタイルは、MTV世代もそれ以上の世代にも好感を持って受け入れられた。当時僕の周りでは”ルックスならマドンナ、音楽性ならシンディ”みたいに言うヤツが多かった(こういう輩は”ルックスならデュラン・デュラン、音楽性ならカルチャークラブ”とも言うのだけれど)。デビューアルバム『She's So Unusual(ハイスクールはダンステリア)』からは4曲ものトップ5ヒットを出した。Girls Just Want To Have Fun はMTVから火がついた曲で、第1回MTVアワードで最優秀女性歌手に選出された。まさにMTVが生んだアーティストだった。また Time After Time は後にマイルス・デイビスにもカバーされる名曲であった。
そんなシンディ人気は映画にも及ぶ。スピルバーグ総指揮の「グーニーズ」の主題歌を担当、Goonies "R" Good Enough も同様にヒットを記録した。今聴くと、イントロのマリンバ風のシンセ音が時代を感じさせる。ビデオには映画出演者も登場して楽しいものだった。映画の方は今も根強い人気があるようだ。RPGゲームそのものの展開(実際ファミコン版「グーニーズ」は名作だった・・・らしい)、お子さまランチ風「インディ・ジョーンズ」というべき演出、自分の属するコミュニティに対する愛情も織り込まれて、キッズムービーながらなかなかの見応えであった。だいたいスタッフがスピルバーグを始め、監督は「スーパーマン」のリチャード・ドナー、脚本は後に「ハリー・ポッター」を監督するクリス・コロンバス、音楽はデイブ・グルーシン。「スパイ・キッズ」なんかがヒットしている昨今、リバイバル公開したら面白いかも。サントラ参加メンバーも豪華。EW&Fのフィリップ・ベイリー(Love Is Alive)、この後シンディと Change Of Heart で共演するバングルス(I Got Nothing)、この年(85年)Can't Fight This Feeling が全米No.1となったREOスピードワゴン(Wherever You're Goin'(It's Alright))、ルーサー・ヴァンドロス(She's So Good To Me)、この後Totoのヴォーカリストに抜擢されるジョセフ・ウィリアムズ(Save The Night)等々。
■「死ぬまでにしたい10のこと/My Life Without Me」(2002年・カナダ=スペイン)
監督=イザベル・コヘット
主演=サラ・ポーリー スコット・スピードマン マーク・ラファロ
友人が「涙なくしては観られない」と言っておったので、どんなもん?と疑いつつも劇場へ足を運んでみました。な~るほど、彼がビーチボーイズの大ファンだったからそこまで感動させられたのだな、納得。God Only Knows(神のみぞ知る) を随所に出してこられてはグッとくるわな。予備知識抜きでポスターを見たときにはガーリーな映画?というイメージを持ったけれど、全然そうではないのね。むしろこの写真を選んだ理由がよくわからん。本編で僕が印象に残ったのは、ビーズののれんの向こうに見える家族の風景。原題「My Life Without Me」の意味が伝わると思うのだけどなぁ。