やっと秋が来たが、灼熱の夏だったせいか昆虫が少なくなった気がする。群落となっているヒガンバナに以前は多くのアゲハをはじめとする蝶がやってきたが今年は閑散としていて種類も少ない。その様子を目立たないように見てると、お互いの縄張り争いが見られるのが愉快だ。ときに、カメラを近づけるとお前は邪魔だと蝶から邪険にされることがある。
今回は、複数の蝶の姿はあまり見られず一頭のアゲハが独裁支配しているように見える。ときには、小さな蝶も来るはずだが確認できていない。これらは熱帯都市化した日本の状況から、昆虫の過疎化が始まったのかもしれない。毎日のように食われる蚊も少なくなった。
とはいえ、カラスアゲハ♀が来てくれたのはうれしい。体の大きさや翅の白帯の広さから「ミヤマカラスアゲハ」ではないのが残念だ。
いっぽう、灯火のわが家に侵入する昆虫が小型化してきている。シジミチョウくらいの大きさの「ホソスジトガリナミシャク」(シャクガ科)の模様がユニークだった。武田信玄の家紋らしきものが確認できる。ひょっとすると、武田家の由緒ある家来だったか、間者だったか、確かめようがないが。
同じくらいの大きさで、家の中ではあまり見ない「スケバハゴロモ」(ハゴロモ科)が来ていた。模様がベッコウ色でスケスケだ。なかなか上品ないでたちである。顔や体形は蝉のようで、蛾のようにやってくるがカメムシの仲間だ。つまり、うわべは上品だが基本的には植物の葉や茎から汁を吸ってしまう害虫でもある。よく見られるのは、茎にびっしりついて吸汁している「アオバハゴロモ」が有名だ。
そして時々やって来るのが、「コクワガタ」だ。クワガタの同定は素人には意外に難しい。昆虫少年ではないオラはいつも困る。とくにメスがわかりにくい。コクワガタ・ミヤマクワガタ・ヒラタクワガタの違いはいまだ区別がつかない。翅の光沢で判断するらしいが夜は明かりの関係で同定に自信がない。昆虫少年ならなんということもないのだろうが、ジイジになるともっとわからなくなる。要するに、ぴちぴちのアイドルを見ても、残念ながらみんな同じような顔としか見られないようなものだ。
またまたミニな輩がやってきている。大きさが畳の目よりやや大きい「コケガ」の仲間「アカスジシロコケガ」だ。今までは、「スジベニコケガ」という「人面」のあるカラフルな蛾もやってきて、その優美な装いにいつも感激していたが、今回はシンプルな4本の筋のあるコケティッシュな蛾だった。コケガの仲間は飛び回らないでじっとしていることが多い。幼虫は地衣類を食べるというので「コケガ」の名前がある。足は白と茶色の交互の模様がある。
成虫は花の蜜を吸い、害虫ではないし、エレガントに目を引くまさにアイドルだ。しかも、中央の模様の二つの黒丸があるのがメスだ。二つずつ黒丸があり計4個の黒丸があるのがオスだというが、今度はオスにも会いたいものだ。昆虫が少なくなってきたのを実感する日々だ。