教育テレビの「美の壺」は放送回数が100を越えて益々面白くなった。視聴者にマンネリを感じさせない堅実な番組である。日本の高度な「職人技」と「美意識」にはいつも驚かされる。
先週の「天守閣」特集は城好きの人ならば多分ご覧になったことだろう。もし見逃していたら、ぜひ再放送を録画してじっくり堪能して欲しいものだ。
豊臣時代は「黒壁の城」が、徳川の世になってからは「白壁の城」が流行と、大まかな区分ができるのが興味深い。「松本城」の下見板には高価な黒漆が塗られているし、白鷺城とも呼ばれる美しい「姫路城」は漆喰に牡蠣殻灰を混ぜて光沢を出している。
「彦根城」は黒壁と白壁をバランスよく配置して愛らしい雰囲気すら漂う。屋根の妻にある三角形の外壁部分を指す「破風(はふ)」が城の顔を決める。
番組では出番の無かった「犬山城」を忘れてはいけない。天守閣ができた時期が先の城よりも古く、地味な印象なので採り上げられなかったのだろう。しかし、天守から雄大な木曽川を望む醍醐味がここにはある。
実際に現地へ足を運んで城郭巡りをしたくなった人は多いはずだ。紅葉の時期に国宝の城を見に行くのも楽しいと思う。