昔の幕の内弁当はやたらと味が濃かった。私の幼い頃の話で昭和40年代末頃にあたる。濃厚な味付けは食中毒予防の意味合いが強かったのだと思う。賞味期限などあまり気にしてなかった時代だ。
弁当の中身も「原色の素材」が目立っていた。ウインナーに漬物など、合成着色料および保存料の使用が盛んだったことは言うまでもない。
そして、弁当には必ずと言ってよいくらい「高野豆腐」が入っていたのを覚えている。甘みだけでなく旨みが強烈なのは化学調味料をガンガン使っていたためだろう。何故、昔の弁当には「高野豆腐」が付き物だったのだろうか。
私はある食の雑誌で興味深い記事を発見した。そこにはこう書いてあった。味の濃い弁当を食べると喉が渇く。お茶が用意されなかった時のことを考えて水気を多く含んだ「高野豆腐」を入れてバランスを取った。
本当かどうかは知らないが、妙に説得力のある説として私の記憶に未だに残っているのである。
