あさりはこれから4月いっぱいまでは美味しい。暖かくなると中にカニが入るので今が一番かも。スーパーの養殖あさりと違って地物は旨味が強い。
あさりは真水に30分つけて塩抜きし、よく洗う。鍋に名水を張り、だし昆布とあさりを入れて火にかける。あくは昆布の粘りに吸収され、取りやすい。ここで昆布を引き上げる。殻が開き始めたら、火を止めて、いったんあさりを取り出す。
だし汁に府中味噌(白)とどうでもいいような安物の中味噌を溶かして、味をきめる。椀にあさりを盛り付けて、汁を張って出来上がり。
料理屋で貝汁をたのんで、あれこれ講釈をたれている下腹の出たオヤジをよく見かけるが、「そんなもん、女房に作ってもらえよな」と私は思う。そもそも家庭料理に過ぎないのだ。私は仕上がりに滅法にうるさいので、自分で作ることにしている。職人がつくる汁よりは味がいい(笑)。
大社から徒歩約5分で目的地に着いた。非常に広大な博物館である。現在開館記念の特別展“神々の至宝”が行なわれており、新しいもの好きの関西人が押し掛けている(笑)。
古墳時代の勾玉、管玉も珍しいが、私が最も惹かれたのは南北朝時代に作られた蒔絵だった。渡来文化を消化した上で日本独自の美を描き出している。古の職人技は入場者を釘付けにした。熊野速玉神社の国宝が特にすばらしい。
目が疲れたので2階の喫茶店に入り、カフェオーレをたのんだ。バッグから筆ペンを取り出して友人への手紙を書き始めた。ここからは大社の日の丸がよく見えた。出口付近には一畑経営の土産物コーナーがあったが、置かれているものすべてが高価だった。私は何も買わずに博物館を後にした。