最上丸という屋号を持つ「タバコ屋」から東南にかけて新町(しんまち)と呼ばれる遊里があった。戦前この辻のすぐ北に「木綿橋」が架かっていた。江戸期には罪人の首を橋のたもとに晒していたと古文書には記されている。
辻を国道2号線の手前近くまで南下した辺りに色街を取り仕切ったI氏の住まいがあった。
戦争末期、米軍の空襲で新町遊廓は丸焼けになり、敗戦から数年後に国道2号線ができて旧色街は分断された。
新町は新船町という意味で現・昭和町3・住吉町1、2(一部)、3(一部)・船町2、3、8・御船町1に相当する。K原氏が経営した遊廓「明治楼」の跡地に「もみじ銀行」が建っている。
旧友と私は銀行南の斜め道を通って酒房「たね」に移動した。そして日付が変わるまで話し大いに飲んだ。
不平不満をほとんど口にしない友が「この国は平和ボケだよ」と言ったのには驚いた。それで私は「夏の終わりに大いにボケてはしゃいだのは60代の目出度いオヤジどもだ。しかしイデオロギーで貧困は救えないよ。若者の方がよほど現実を冷静に見てるさ」と返した。私達の冷ややかな笑いはしばらく続いた。
LET IT BEは中学時代の愛聴アルバムだった。霧のかかったようなサウンドは不思議な魅力を持つ。この中にジョージ・ハリソンの曲が2つ入っているが、「I ME MINE」が特に好きだった。
ジョージ曰く「エゴイズム」をテーマにした曲で、メンバーに「こうしろ、あーしろ」と細かく執拗な指示を出すポール・マッカートニーを強烈に皮肉ったという説はあまりにも有名だ。
映画の中でポールがあえてジョージのプライドを傷つけるような発言をするシーンを見ている人は歌詞の意味するところに苦笑したことだろう。我の強さは時に他人を不快にさせる、そんな身近なテーマをとり上げ扱き下ろす英国人のセンスはすばらしい。
下らない自己主張ばかり続ける人間は私も昔から大嫌いである。「餌をくれ」と四六時中鳴く「狂犬」と知的レベルは同等だと思う。個人的感情をぶつける「匙加減」を間違え続ける輩を北関東の方言で「でれすけ」と言う(笑)