和牛の霜降り肉は噛む必要がなく、舌の上でとろけていく感じである。豊富な脂肪分が美味しさの素とも言える。外国産の牛肉と大きく異なる点はここだろう。
我が国においてやわらかさが好まれる傾向が年々強くなっていることに私は危惧の念をいだいている。噛むという行為は肉食動物には必須で、脳の進化にも大きく影響を与えたと思われる。
最も原始的な食べ方(人間が肉食動物のひとつであること)を忘れて学習能力が下がり、歯並びが悪くなっている事実を指摘する学者は少ない。
ビーフィーター(牛肉喰らい)とフランス人に馬鹿にされたイギリス人を思い出すが、むしろ知能が発達したのはイギリス人の方ではないだろうか。
シンプルなビーフステーキの美味しさは噛むことによる満足感と言えなくもない。少々かたいが、肉本来の旨みをワイルドにかつ自然に味わうイギリス人を私は尊敬する。