幼い頃、家族四人で潮干狩りに出かけるのが大きな楽しみであった。五月の連休前後に潮の良い日を選んで、泥んこになって暗くなるまでアサリを掘った記憶がある。30年以上も前は大アサリがたくさん取れた。オオガイやモガイも時々出てきた。バケツ2杯分になった時点でお開きだった。
母は泥を吐かしていないアサリで酒蒸しを作ってくれた。ジャリジャリするのも気にせず、手づかみでかぶりついた。あの天然の旨味の濃さを今でも忘れることができない。大アサリを買い求めて再現を試みるが、全然ダメだ。
排水で海が汚れ、モラル無き民が根こそぎ獲った結果、今では稚貝をまいて養殖する以外に手が無い状態である。欲望のしっぺ返しは痛烈だ。

