北寄貝(ホッキガイ)のフレッシュ乾物(!)を、青森の知人から贈られる。ふわっとした食感を残した乾物は、ファミリー層に人気なのだ、という説明に、さらに驚きました(笑)。
乾き物(かわきもの)で一杯って、昭和の晩酌風景と、思っていたのです。魚類を食べない子供に、親のサワーのあての乾き物を与えるから、柔らかい食感が好まれるとのこと。
保存性の高くない、甘い味をつけたのが、売れるのだから、乾き物の文化は変わっていくのだ、時流が動く時だと、不思議な気持ちになりました(微笑)。
ホッキガイを火入れすると、淡いエンジ色とアイボリィのコントラストが生まれます。貝飯にすると、花を炊き込んだかと思うほど、美しい一膳になります。20年ほど前、新宿三丁目にあった、はまぐり、という貝料理専門店の名物でした。小さな釜で小人数ごとに炊いて供するのは、末廣亭帰りと思しき、いなせなお客様の姿と共に、美しい江戸情緒の記憶です。
写真は、海老塩風味のポップコーンと盛り合わせてみました。令和のオヤツなら、こんな風景でしょうか?(微笑)
それでも尚、ホッキガイの色味の美しさは、目を奪います。エンジ色とアイボリィは、円熟味を感じさせる組み合わせなのだと、改めて見直しました。
ウバガイとも呼ばれる、この貝の、名前の由来は様々です。
色の組み立てが乳母の胸元を思わせるから、というエロティックな説明を、聴かせてくれたのは、新宿のはまぐりの大将(笑)。
7〜8年、育たないと、売り物にならないし、30年生きる貝だから、婆さんと呼ばれて、姥貝(ウバガイ)と呼ぶんだ、と教えてくれたのは、はまぐりのカウンターにお座りの、着流しにパナマ帽のご年配のお客様(笑)。
その掛け合わせが、きれいで、こんなセリフが決まる、大人になろうって思った日が、ありました。(笑)
一袋のフレッシュ乾物(!)も、また、時を遡るパスポートになった夜更けでした。