『時を経て入りし奥沢倒木の重なり増して気の重きかな』
『尺五寸倒木なれど刻むのは手ごわき相手日長付き合い』
『景観も塩梅も見つ選木は行きつ戻りつ眺めて終わり』
『軋む幹命絶つノコ出る呪文』
素人には手強い 八寸を超える太さだ
軋みながらも狙った方向に倒れてくれた 緊張がほぐれ真言をつぶやく
間引きや除伐も大切な作業だが 倒れていく数秒間は特別な感情が湧く
杣人が礼を欠かさなかったとか聞くと それはよく理解できるようになった
今はチェーンソーで一瞬だ 省力無機的処理で悲しい
『泣き激し施術出来ぬと送られし嬉々たるこの子片鱗もなき』
『泣き虫がなして変わるか知らねども高い高いに委ねた笑顔』
『朝なれば上がりかまちで待つと言う母の言葉のなんと嬉しき』
『この子ゆえ父母別れしと憶えども背負いたる荷のなんと重たき』