the other side of SmokyGitanesCafe
それとは無関係に・・・。
 




GITANES臭が証拠になる。
それとは無関係に・・・。


さて、ヒルメシでも行くか。

会社ではどの時間帯に昼飯を食べても自由なので(長さは
もちろん限られているが)、思いついたときに昼食になる。
とは言っても、大体12:30から13:00ぐらいに
出発するような習慣にはなっている。



自宅から持ってきた読みかけの文庫本を、ジーパンの後ろポケット
に入れ、財布と携帯電話を持って取りあえず出掛ける。

今日はどの店へ行こうか。
ちょっと、そのまえにコンビニでフリスクかミンティア的なものを
買って、そのあとちょっと引き返して、ランチはあの店にしよう・

と考えながら、ボチボチ歩く。


ミンティア的なものを三つほど買い、目的の店へ引き返す。

その途中に小さい本屋がある。
この店は品揃えや店の人間の態度など、あまり好きではないのだが
途中にあるのだからと、ちょっと寄ってみる。
暇そうだ。いつも暇そうだ。
店の人間は、痩せていていつもタバコをくわえているオジイと、
いつもスラックスにカッターシャツだがネクタイを巻いていない男、
化粧が厚いおばさん(これが私の天敵のような人間だ)と、
レジの女のコ(年中紺のスカートと紺のベストを着ており、制服だと
思われるのだが、その服装は彼女だけなので、制服だとは言い切れない)
の4人だった。
暇そうだ。

洋服関係の雑誌の辺りをザッと見る。まだ入れ替わる時期ではないので
既に購入したものばかりだ。
カメラ、ガーデニング、ゴルフなどの雑誌のコーナーも見たが
そこも同じ状況。

ん?暇そうな4人は直前まで賑やかに話しをしていたのに、
どういう訳か静まり返っている。
一応客がやってきたから、会話を止めたのか?職業倫理か?

美術関係、ビジネス関係の棚を見ても、あまり変わりばえしない。
そう言えば、最近探していた新書があったのだ・と思い出し、
やや奥まった新書コーナーへ移動。
背表紙を目で追うが、どうもこの店にもなさそうだ。

気がつくと、さっきまでレジ周辺にいた痩せタバコと制服女子が
私の背後の棚の向うに移動していた。
何なのだ?ゆっくり見せてくれないのか。

と考えているうちに、重大な事実に気がついた。


ジーパンの後ろポケットに文庫本が!


ジワッと汗が噴出す感じがしたが、そんな様子を気取られては
いけない。どうしていけないかわからないが、とにかくこっちは
平静でなければ。なにしろ、何もしていないのだから。


ゆっくり新書コーナーから移動する。

奴らは、私が店に入ってきたとき既にポケットの本に
気付いていたのか。それとも後で気付いたのか。
後で気付いたのなら、大きい誤解がある可能性がある。


すぐに逃げるように店を出る訳にもいかないので、
再び雑誌のコーナーあたりに移動。
余裕の物腰で雑誌を物色するフリをする。それにしても
どうして私はまったく興味がないのに、「旅行誌・地図コーナー」
を眺めているのだろうか。


レジ前の「ゲーム攻略本」前に移動。
興味はない。しかし、レジの人間にわざとポケットの本を見せる
ためだ。
じっくりその本を見せて、どうか「今万引きしたものか、購入後
しばらく経っていて、ちょっと汚れている本か」をじっくり
観察してもらうためだ。
(どうしてそんな必要があるのだ?その上、文庫本などいつも
汚れる前に読み終わってしまうので、私の書斎の文庫本は全て
新品同様なのに。)


濡れ衣・冤罪。

そんな言葉が頭の中に浮かんでは消えた。
闘うしかないのか。徹底的に。
物理的に制圧されたらどうするのだ?
押さえ付けられた人間が死んだ・なんてニュースも見たことがあるし、
そうなったら、抵抗していいのだろうか。
痩せタバコと厚化粧おばさんとノータイ男と制服女だ。
4人がかりで押さえつけられると、それなりに苦しい。
まあ痩せタバコと制服女は排除できるだろう。
いや、できるからと言って、暴力に暴力で対抗するのは
いかがなものか。
 抵抗せずに、静かに事情を話すべきか。
話しをしている間に多分誰かが警察に連絡するだろう。
おお、呼んでもらおうじゃないか。
こちとらやましいことなんて、お天道様に誓って
なんにもありゃしねえ。
おお、呼びやがれ。

それとも、無事に店から出させておいて、後であらぬ噂を
流す気かもしれない。
「あの会社のあの男は、文庫本を1冊パクって行ったチンケな
野郎だ」などと。

くそ、卑怯なり。
言いたいことがあったら、今言わぬか?!

ゲーム攻略本も料理雑誌も一通り見てしまい、
出口に近付く。
背後を振り返る余裕が無いので、痩せタバコと制服女が
今も張り付いているのかどうか確認できない。
レジにはノータイ男だけだ。

いっそのこと、何か本を買おうか。

いやいや、それではなんだか、ちょっと負けているではないか。


と考えながら、ついに店を出てしまった。

ゆっくりゆっくり左へ向う。

右後ろポケットには相変わらず本の感触がある。
これがもし落下なんかしたら、それが何かのきっかけに
なってしまう恐れもある。
本が落ちないようにもう一度きっちりポケットに入れ直し
たかったが、今本に手をやる訳にもいかない。
多分いま観察されているはずだ。

ゆっくりゆっくり歩いた。


本屋から私のポケットが肉眼では見えない距離に
きたところで左折。
別に見えないところまで左折を我慢したわけではない。
たまたまだ。


目的の店に入り、窓際の席に座る。

ブラインドを裕次郎のように指で押し上げ、尾行がないことを
確かめた。
どうやら追っ手はないようだ。


その店の前は、先日書いた「旗屋」さん。
ブラインド越しにその店が見える。
あのゴルゴ13の取次店かも知れない旗屋さんだ。


あの本屋の連中は、合法的な解決を諦め
この店経由でゴルゴに依頼するかも知れない。
これはちょっと手強いではないか・・・。



本を持って本屋に行ってしまった私が全面的に悪い。

あの店には二度と行けないかもしれない。

別に困らないが。




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