GITANESは他人に遠慮しながら吸うような
タバコではない。
だから無人の場所で吸いましょう。
それとは無関係に・・・。
家人「吉岡さんから電話があったよ。」
私 「朝っぱらから?」
吉岡翁は、多分80歳近い男性で、毎日午後6時頃に
入浴し、暑さを冷ますために家の前の道路に立ち
手にしたラジオで野球の実況を聞いている人物だ。
道路といっても畦道に近い道で、そこは私が毎晩
犬太郎(ケンタロウ)と散歩散歩するコースでもある。
犬太郎も他の通行人や道で出会う人にはちょっと興味を
示したり警戒したりするのだが、吉岡翁にはまったく反応しない。
どうやら、木か何かと間違っているらしい。
そういえば吉岡翁、かなり枯れている。
家人「橋本さんの家で不幸ごとがあったって。」
私 「橋本さん?」
吉岡翁は今年、我が家が(自動的に)所属するW自治会第2班の
班長で、私は「月当番」であるから、組織内では上司にあたる。
Hさんの家は、吉岡翁宅と我が家の中間にあるらしい。
ウチもこの場所に引っ越してきてから1年経つが、近所付き合い
もほとんどないので、どこが誰の家なのか全くわからない。
家人「『月当番なので、葬式のことについて橋本さんに
電話してください』って。」
私「橋本さんって、不幸ごとがあった家?」
家人「そう。」
私「何のための電話をするの?」
家人「『どうしましょう?』って尋ねるらしいけど。」
私「直接その家に『どうしましょう』って尋ねる?!」
家人「吉岡さんはそう言ってたけど。」
吉岡翁もよくわかっていないらしい。
わからないから直接その家に尋ねよということか。
私「何を手伝うんだろ?仕事休んで手伝うのか?」
家人「多分、自治会各班の掲示板に葬儀の案内を貼るんだと
思うけど。」
私「ああ・・・。そもそも橋本さんって、誰?」
家人「まったく不明。会ったこともない。」
W自治会は20数班に分かれていて、掲示板は30数ヶ所にある。
そして私には、まったく土地勘がない。
向かいのおばちゃんUさんが歩いているのが窓から見えたので、
つかまえて質問した。
「班長さんからこんな命令が出たんやけど、どうしたらええやろ?」
Uさん「あんたこの辺の地理、まだわからんやろ?」
私 「うん、わからん。何を手伝うの?」
Uさん「葬式のビラ貼りだけやろ。」
私「あ、そう。これから仕事なんやけど」
Uさん「ほな、仕事行ったらええがな。ビラ貼りなんて
その辺の暇な人と、橋本さんと親しい家の人が全部
やってくれるがな。」
私 「そう?」
Uさん「そうそう。放っといたらええがな。」
私 「ほな、そうするわ。ありがと。」
30分ほど後。
ずっと通話中だった吉岡翁の家に、やっと電話がつながった。
私「もしもし、さっき電話もらった二班のSGCですけど」
翁「はいはい、ご苦労さんです。」
私「亡くなった人の家に直接電話して『どうしましょ』って
遺族に尋ねるのは、どうなんやろか?」
翁「ああ、それねえ。岩橋さんがさっきウチへ来て、全部
手配するわって言うてたから、もうええんとちゃいますやろか」
私「ああ、そう。じゃあお参りだけさせてもらいます」
翁「そうやねえ、はーっ、はーっ、はーっ(※笑い声です。)」
私「急に仕事休まれへんし、土地勘ないからビラ貼りに行かれ
へんし。」
翁「ああ、そうやねえ!
私「じゃあそういうことでよろしくお願いします」
翁「はいはい、じゃあワシから坂口さんにも言うときます。
はーっ、はーっ、はーっ。はーっ・・・」
電話を切るときもまだ笑い声は続いていた。
橋本さん、岩橋さん、阪口さん。
誰やねん?
※近所の人らしいけど一人も知らぬ。
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