ウリパパの日記

自由気ままに・・・

新国立劇場 リゴレット初日

2008-10-25 23:10:44 | オペラ
新国立劇場「リゴレット」の初日を見てきました。舞台も音楽も充実した公演で、これこそイタリアオペラ!満足して帰ってきました。

本公演は、ルキーノ・ヴィスコンティの元で研鑽を積んだ故アルベルト・ファッシーニが新国立劇場のために演出した舞台の再演です。奥行きのある劇場空間を活用し、第1幕では回り舞台による場面転換を取り入れています。光と闇のコントラストが効果的で大変美しい舞台でした。でも第3幕のスパラスチーレの家は傾斜がきつく、特にリゴレットとジルダは外で立っているのが辛そうでした(笑)。
2000年の新国立劇場初演時にも私はこの演出を見ていますが、今回のほうが格段に印象に残りました。最近流行の時代の読み替えとか、奇をてらった演出にうんざりするこの頃なので、むしろ伝統的な演出のほうが新鮮に感じてしまうのかもしれません。
 
ダニエレ・カッレガーリの音楽は、東京フィルと新国立劇場合唱団そして粒揃いの歌手達からヴェルディの劇的な音楽を引き出していました。座席は一階4列目(ほぼ正面)で見たのですが、舞台の歌手に指示を送るカッレガーリの指揮棒の動きがよく見えて面白かったです。

タイトルロールを歌ったラード・アタネッリは初めて聞きました。若々しく魅力たっぷりです。第1幕の道化師役はとても芸達者、第2幕では響き渡る圧倒的な力強い歌声で魅了、そして第3幕のジルダが息絶え、Ah la maledizione! で終わる感動的な幕切れとヴェルディバリトンの本領発揮。素晴らしい歌唱と演技でした。但し、リゴレットの心の内側で起こる激しい葛藤を歌い上げる表現力という意味ではまだまだかな?という印象でした。今後の活躍が楽しみなバリトンです。

マントヴァ公爵を歌ったシャルヴァ・ムケリアは、アタネッリと同じグルジア生まれ。パンフレットに紹介されていた写真とはイメージが程遠く(外見上の話です)、キャストが変わったのかなと思ったほどでしたが、魅力たっぷりの公爵でした。高音の美声には思わず鳥肌がたつほどで、見事にハイCを決めていました。

そして、ジルダを歌ったアニック・マッシス。イタリアの声ではありませんが、私は満足しました。出だしこそ控えめでかつ不安定。この先でどうなるのか心配になりましたが、尻上りに本領発揮。何て美しく透明感溢れる歌声なのでしょう。一幕後半のアリア(慕わしい人の名は)が終わり、舞台が回転して場面転換しつつ声が消えていく場面は、感動ものでした。周囲(私の母親です)から思わず素晴らしい!の一言。終幕の息絶える場面も涙を誘いました。

主役3人を支える日本人キャストも粒揃いで、特にスパラフチーレを歌った長谷川顯とジョヴァンナ役の山下牧子が印象に残っています。そして東京フィルと合唱団は期待を裏切らない素晴らしさでした。前回のトゥーランドットは終演後にもやもやしたものが残りましたが、今日の公演は満足感に満たされて帰ることができました。
 
私は今回を含めて5回リゴレットの生演奏を聞いていますが、1993年のボローニャ歌劇場来日公演が一番印象に残っています。内面的な心の葛藤を歌い上げるレオ・ヌッチのリゴレットに衝撃をうけたのです。新国立劇場の2000年公演では、そのヌッチがリゴレットを歌う予定でしたがキャンセルになり、アレクサンドル・アガーケに代わりました。アガーケも今日のアタネッリも、これからが期待できるヴェルディ・バリトンです。 


これは新国立劇場正面に飾られていた活け花です。
コメント
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